業務主導で進めるため専門チームを立ち上げ
「事務企画部長」という肩書きからわかるように、RPAの取り組みを主導する拝田氏自身は業務側のリーダーだ。IT主導ではない点も同社のプロジェクトがうまくいっているポイントかもしれない。
「RPAは細かな実務をロボット化するので、業務に根ざさないとうまくいかない」という言葉は実感を持って響く。IT部門と協力しながら業務主導でのRPAを活用するにあたり、第一生命では事務企画部内に「ロボティクス管理チーム」を内設した。第一生命から約8人、システム子会社(第一生命情報システム)から約30人、そして外部の開発者で構成されるチームで、ロボットの開発、運用保守を一手に請け負う。
各所管が自分たちのニーズに応じてロボットを作るというやり方もあるが、拝田氏は専門のチームを設けた理由として、「担当者が(退職などで)いなくなった時に変更・修正が難しい」「システム変更によりロボットの保守・変更が必要になる「ロボットの管理(使われていないロボットが動いている損失を防ぐ)」などを挙げた。
ロボティクス管理部門は全社にノウハウを伝えるという重要な役割も担っている。「教育やトレーニングは重視したことの1つ」と拝田氏。導入開始時は具体的なイメージが湧くよう、ロボットが作業している動画を作成して会議で説明したという。現在は「RPAアンバサダー」として導入する部署で1~2人の担当を選び、2カ月に1回程度の研修を受けてもらい、それぞれの部署で広めてもらっている。「ロボットとは何か」といった基本的な情報に始まり、業務のロボット化で用いるドキュメントなどまでも学んでもらっているとのことだ。
このような体制に加え、事例を共有することで「〇〇の業務が自動化できるのなら、うちの部署のこの業務も自動化できないか」などという声が聞かれることも増えた。全社展開後、計画を上回るペースでロボット化が進んでいるという。「全社で働き方改革をしよう、業務を削減して成長分野に人がシフトできるようにしようと大きな目標を掲げており、各所管がミッションとしている」と拝田氏は話す。
RPAのスケールアップに人材育成は不可欠
拝田氏は、「これまで業務を自動化したくても、システム投資が必要となると二の足を踏んでいた。RPAなら、少ない投資額で簡単に実現できる」と言う。ロボット導入などの業務効率化を進めれば、人材の効果的な活用が可能になる。
インステック(保険の「Insurance」とテクノロジーの「tech」を組み合わせた言葉)という言葉が登場するなど、保険業界ではテクノロジーの活用が進んでいる。加えて、ビジネスモデルの変化も始まっており、第一生命も国内での成長に向けて「ネオファースト生命」や「第一フロンティア生命」を立ち上げたほか、海外展開も加速させている。これら新しい事業も人をシフトさせないと進まない。
今後の計画として、2020年に2000業務、2022年には3000業務をRPAで自動化する。課題は「人材の育成」だ。「ロボット開発とアンバサダーの両方で、人材育成をしっかりやりたい。計画的な人材育成なしにはスケールアップは難しい」と拝田氏は述べる。
RPAによる業務の自動化とともに、フロント(顧客インタフェース)のデジタル化も進めている。手続きを高速に、顧客にとって便利なものにするためにデジタル化を進めつつ、手書きについてはAIを利用してOCRでデジタル化することも検討していきたいという。ロボット自体も、より複雑な業務に対応できるようルールエンジンを導入するなどの計画もあるそうだ。