RPAベンダーの英Blue Prismは6月13日、ロンドンでユーザーイベント「Blue Prism World 2018」を開催した。共同創業者兼CTOのDave Moss氏が「RPAの先へ」としてAI戦略を説明、Amazon、Microsoft、Googleら主要クラウドベンダーなどとの提携を通じてインテリジェント、コネクテッド、管理性を特徴とする「デジタルワークフォース」を強化した。

Blue Prismは英金融機関向けのバックオフィス業務の自動化機能を開発するために2001年に創業、その後汎用的な製品にして一般への提供を始める。2008年に導入方法論を確立し、2012年に市場展開を本格化、2016年より米国など国際展開も進めている。顧客数は700以上、契約更新率は100%を誇る。世界的に業務自動化への期待が高まる中、Blue Prism Worldには1100人の顧客やパートナーが詰め掛けた。

CEOのAlastair Bathgate氏は、2009年に初めて開催されたBlue Prism Worldの参加者は12人だったと振り返りながら、「信頼、拡張性、安全、耐障害性、高品質のエンタープライズ級ソフトウェアを提供するという当初のビジョンは変わっていない」と顧客らに伝えた。「RPAはBlue Prismが考案した言葉」であるとし、「業界のパイオニアとして、ソフトウェアを超えて業界で最も考え抜かれたエコシステムを構築する」と提携重視の考え方をアピールした。

  • Blue Prism CEO Alastair Bathgate氏

Blue Prismを核にパートナーのAI技術の利用を可能に

同社の戦略について具体的に説明したのは、CTOのMoss氏だ。彼はBathgate氏と共にBlue Prismを創業した人物だ。

「今は予測が難しい時代。われわれは企業が変化に適応するのを支援する。それに必要なものは、ソフトウェアロボットを超えた技術だ」とMoss氏は述べ、RPAによる業務の自動化の先として「デジタルワークフォース」を提案した。

  • Blue Prism 共同創業者兼CTO Dave Moss氏

IT民主化、ビジネス手動の技術としてソフトウェアロボットを開発、以降、役割ベースのアクセス、ワークキュー、パスワード管理などの機能、リファレンスアーキテクチャの開発など進化させてきた。現在、Blue Prismが目指すのは、より大規模なボリュームの作業を任せられるRPAシステムだ。スケジュール、例外管理などの機能を付け加えることでソフトウェアロボットによるワークフォースを図る。

「デジタルワークフォースを作り、これを自在に拡張させ社内の作業、顧客向け作業に利用できる。新しい労働のスケール手法となる」とMoss氏。

  • Blue Prismが進めるデジタルワークフォースは、提携企業のAIなどの技術により拡張可能なBlue Prismをプラットフォームが中核となる

組織の構成要素としてのデジタルワークフォースとなるために必要な特徴として、Moss氏は「インテリジェント」「コネクテッド」「容易な管理」の3点を挙げる。

「インテリジェント」では、データを集めて洞察を導く「ナレッジと洞察」、文脈から学習できる「学習」、コンピュータビジョンにより人間のように画面など情報を読んだり、ビジュアル情報を文脈化したりする「ビジュアル認識」、システム、データ、プロセスの問題を人間の介入なしに解決する「問題解決」、人、プロセス、他のソフトウェアロボットと協業する「コラボレーション」、ルールエンジンによりビジネスの優先順位に合わせて処理する「プランニングとシークエンシング」などのスキルを加える。

ここでは、Blue Prismは技術アライアンスプログラム(TAP)として、Amazon Web Services(AWS)、Google、IBM、Microsoftの主要クラウド事業者、Splunk、Appian、Celatonなどのテクノロジーベンダー、Microsoft、Citrix、VMwareのインフラベンダーと提携しているが、新たに「Digital Exchange」を導入する。

顧客は「Digital Exchange」により、TAP各社が提供する自然言語処理、翻訳、コンピュータビジョンなどのAIなどの技術を検索、比較、購入、そして利用できる。「自動化スキルをApple iTunesのように簡単に入手できるようにする」と、Moss氏はプラットフォームとしての機能を強調した。これが「コネクテッド」となる。

  • 提携企業の技術を容易に入手できる「Digital Exchange」を発表

こうしたパートナー主導のAI戦略により、「顧客に最先端のAIの選択肢を提供し、しかも事前統合設計されているのですぐに利用できる」と、Moss氏はメリットを強調した。

「管理」では、24時間365日のオペレーションというソフトウェアロボットを柔軟かつ動的に管理することで最大のメリットを得られるようにする。またGDPRなどの規制遵守やセキュリティ機能も備え、Blue Prismの特徴であるオブジェクト指向のロボット作成コンセプトが再利用可能なコンポーネントの活用を可能にするという。

この日は、ビックデータとBIのEphesoft、プロセスマイニングのTimelinePI、インテリジェントな意思決定やデータキャプチャなどの技術を持つXpertRuleの3社AI技術の統合が発表された。 0

次期バージョン「Blue Prism 6.3」を紹介

製品としては、2017年9月に発表した「Blue Prism 6」の次期版となる「Blue Prism 6.3」が紹介された。Googleの機械学習機能との統合を密にし、Googleと共同作成する「Cookbook」とするガイドブックを提供するという。「より複雑な機械学習、データ主導のユースケースに対応できる」とMoss氏。Microsoftについても対応を進めているという。

リリース予定の機能としては、Blue PrismとWeb上にあるサービスとを接続する最新の「Web API Configurator」、単一のBlue Prism環境・アーティファクトを土台に役割に応じて複数のチームを構築するマルチチームなどの機能の開発を進めているという。

デモでは、Microsoftのテキスト分析エンジン技術を利用して電子メールから感情を分析するセンティメント分析、Googleの機械学習技術を利用したクレジットカード承認プロセスなどを見せた。

  • クレジットカード承認プロセスの自動化を作成するデモ。右の「Skills」からGoogle、Splunkといった外部のスキルを組み合わせてリスクスコアが低い/高い/中間に合わせてプロセスを自動化する

「Blue PrismはビジネスのOSになる」と語るMoss氏。Digital Exchangeのローンチにより「われわれのプラットフォームで利用できる技術、オートメーションスキルを容易に入手して簡単に自動化のメリットやチャンスをすぐに得ることができる」と続けた。そして、提携とプラットフォームでAI戦略を進め、デジタルワークフォースのビジョンを強化することを約束した。