日立製作所(以下、日立)は、ピッキング用ロボットと自律走行する搬送台車を統合制御することで、搬送台車に積まれた商品群の中から指定の商品をスムーズに取り出し、ピッキング作業を効率化する複数AI協調制御技術を開発したことを発表した。

  • ピッキング用ロボットによって搬送台車に積まれた商品を取り出す際の技術比較

    ピッキング用ロボットによって搬送台車に積まれた商品を取り出す際の技術比較

近年、物流倉庫では、膨大な種類と数の商品在庫の中から注文に応じた商品を集めるピッキング作業が大量に発生しており、作業の自動化と効率化が求められている。ピッキング作業を支援するために、商品を棚・ケースごと運ぶ搬送台車は既に実用化されており、現在はケースから商品を取り出すピッキング用ロボットと搬送台車を組み合わせたシステムの開発が進められている。

しかし、ケース内の商品の荷積み状態は、搬送やピッキング作業に伴い崩れて複雑になるため、搬送台車の移動速度も考慮した上で、瞬時に取り出す商品や取り出し方法を判断してロボットを制御するのは困難で、ピッキング作業を行う前に搬送台車を静止させる必要があった。そのため、搬送台車の停止時間がロスとなり、効率的なシステムを構築することが困難であった。

このたび日立は、ピッキング用ロボットと搬送台車を協調させ、ピッキング作業の効率を最大化するための複数AI協調制御技術を開発した。同技術では、カメラ画像から、取り出す商品とその最適なピッキング方法を判断するAIのもと、ピッキング用ロボットを制御するAIと、搬送台車を制御するAIをリアルタイムに統合管理し、協調制御する。

  • 複数AI協調制御技術のリアルタイム処理イメージ

    複数AI協調制御技術のリアルタイム処理イメージ

これにより、商品の荷積み状態に応じて搬送台車とロボットアームが最適な速度で互いに衝突することなく近づき、搬送台車停止させることなく効率的な自動ピッキングを実現する。

この技術を活用した実験の結果、0.5m/秒で走行する搬送台車を停止させることなく、商品のピッキングに成功したという。また、搬送台車を停止させてからロボットが商品を取り出す従来の方法では13秒だった作業時間が、同技術を活用した場合は8秒と、38%の高速化を確認できたということだ。

今後、日立は、同技術の製品化を図るとともに、無人搬送車「Racrew」や自律型移動ロボット「HiMoveRO」などとあわせて、物流の効率化に貢献していくとしている。