ベルギーのナノテク・ハイテク研究機関imecは、5月23~24日にかけて開催された「imec Technology Forum 2018」で、目の検査および眼球運動を追跡・記録するために使用されている眼科技術である眼球電位法(EOG法)に基づいた新しいワイヤレス・アイトラッキング技術を発表した。

標準のメガネに組み込み、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)体験を向上させるほか、神経変性疾患の早期発見などの医療臨床研究に使用することを目指している同技術は、標準仕様のメガネに5つの乾式接触電極を搭載。これらの電極が、左右のこめかみ、鼻の上部(両眼の中間)、左右の鼻あてパッドの5か所で皮膚に接触し、電位測定を行う。

  • EOGを利用した低消費電力ウェアラブル・アイトラッキング・メガネ
  • EOGを利用した低消費電力ウェアラブル・アイトラッキング・メガネ
  • EOGを利用した低消費電力ウェアラブル・アイトラッキング・メガネの5か所の電極 (出所:imec)

またデザインも人間工学に基づいたものを採用することで、着用者に違和感を感じさせずに、電極の電位測定による眼の動きに対する追跡(アイトラッキング)を実現したという。これにより、アイトラッキング機能を備えた先端のAR/VRヘッドセットと比較しても安価で、かつかさばることないデバイスを実現できるようになるという。

  • imec開発のEOGメガネ

    外観はほとんど標準的なメガネと区別がつかないimec開発のEOGメガネ (出所:imec)

さらに、現在のカメラベースの手法の2倍以上高速な毎秒256回のサンプリングレートで目の動きを検出することが可能なほか、Bluetoothでの通信による小型バッテリ駆動を可能としている。

具体的な使用方法としては、AR/VRアプリで、ユーザの目の動きを追跡し、インタフェースやメニューをすばやくナビゲートすることができるとしており、これにより煩雑な手による操作を扶養にできるほか、高度なアルゴリズムは、眼球運動信号を仮想的なコマンドに変換することで対応することができるという。

  • 眼球の動きの出力例

    眼球の動きの出力例 (出所:imec)

一方の、医学分野への適用としては、パーキンソン病またはアルツハイマー病などの神経変性疾患は眼球の動きに影響を与えるという研究成果が近年、発表されており、そうしたことを踏まえ、imecでは、神経変性疾患の早期発見と疾患進行のモニタリングに関する臨床研究に同技術が活用できるのではないかとも説明している。

なお、同EOGメガネは、imecと開発協業しているベルギーの工業デザイン企業GBOがデザインし、スイスのDatwyler Groupがポリマー電極を開発したという。