デンソーは5月15日、トラックやバスなどの商用車に後付け可能なドライバーのステータスを表示するモニタ「DN-DSM」の発売を開始したことを発表した。
同社は2014年より、大型バスや大型観光バスの新車向けにドライバーステータスモニタ製品を提供してきたほか,107年より、アイルランドFotoNationとドライバーの状態検知性能の向上を目指した協業を進めてきており、今回の製品はFotoNationの顔画像認識ならびにニューラルネットワーク技術を活用し、検出のための特徴点を増やすことで、運転状態の検知精度を向上させたほか、マスクやサングラスといったもので顔を隠した状態での認識率の向上を実現した。
また、車齢が長い商用車への取り付けを可能としたほか、走行中のドライバーの状態をSDカードに保存することで、運行管理者やドライバーが、警報回数や警報時の様子などの運転状況の振り返りができるようになるため、運転指導などの充実化も図ることができるようになる。
さらに、2018年夏以降の予定として、同社が発売する予定の商用車向け次世代テレマティクス端末もしくは富士通のクラウド型デジタルタコグラフと連動させることで、リアルタイムに運行管理者にドライバーの状態を通知することも可能となるため、ドライバーへの注意喚起の促進や、緊急時の迅速対応などの実現、健康の維持などにもつなげることができるようになるという。
いつもの運転の安全を守る技術
こうした後付け可能なドライバーステータスモニタを開発した背景について、同社は、「既販車は車齢が長く、そうした新車ではない車両は、安心・安全系の機器の装着率は必ずしも高い状態にあるとは言えない。一方で、大型商用車の事故の多くが、『等速(直進)』の状態で発生しており、その際のドライバーは、『わき見』や『眠気』、落としたものを拾うといった『体位』の変化といった通常の運転状態とは異なる状態が多く、そうした状態を知ることで、バスやトラックの事故を減らし、安全運転につなげたい、という思いから開発に至った」と説明する。
そうした背景から、2014年より提供を開始した新車向けドライバーステータスモニタは、日野自動車やいすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バス向けにすでに約14万台を供給してきた実績があるとする。
今回の製品は、これをさらに発展・改良させたもので、ハードウェアとしては近赤外カメラと、そこで得たデータを処理する本体部に分けることができる。その特徴としては、従来機種を実際に利用してもらって得た顔画像データベースをもとに、FotoNationとの協業により得たディープラーニングベースの画像認識技術を活用することで、個々人の顔の位置や目の開き具合を把握。わき見運転をしていないか、目を閉じていないか、不自然な体位になっていないか、などを推定し、運転に不適切な状況であると判断すれば、それを元に戻すようなメッセージを添えて警報を発することで、安全な運転状態に戻すことを支援する。
具体的には、近赤外線カメラなので、モノクロとなるが、顔中に特徴点(目、鼻、輪郭など)を用意。特徴点の数も62点と、従来機種よりも増やしたことで、安定的に顔を認識できるようになり、画像認識精度の向上を実現。例えばドライバーが顔を横に向けても、それを追従して捕捉したり、目を閉じている状態などが2秒ほど続くと、休憩をとるようなメッセージを発したり、ドライバーの眠気の度合いを推定するといった測定もカメラを通して行うことが可能となっている。
大型の商用車から、小型の商用車、そして乗用車へ
今回の製品は、大型の商用車に後付けする、という目的から、本体、カメラともにある程度の大きさでの提供となるが、将来的には小型化したモデル(具体的には同製品の半分程度の大きさ)を提供することで、大型商用車のみならず、小型商用車、そしてさらにシステムそのものが設置されていることがわからないところまで小型化することでの乗用車へと市場の拡大を図っていきたいとする。
なお、メーカー希望小売価格もオープンとなっているが、実売想定価格としては、取り付け費用を含めて10万円程度。年間で5000台程度の既販車への搭載を目指すと同社では見通しを述べているが、製品の世代を重ねることで、後付け製品でもさらに金額を下げていきたいとする。また、国内だけではなく、海外への販売も進めていくことで、広い範囲での安心・安全の提供を目指していきたいとしている。