産業技術総合研究所(産総研)は、同研究所無機機能材料研究部門 高機能ガラス研究グループの正井博和氏が、石塚硝子と共同で、液相法によって500℃程度で作製できる、耐水性、耐熱性、耐光性を持つ無色透明な低融点ガラスを開発したことを発表した。
ガラスは、耐熱性や耐光性、光透過性に優れ、さまざまな光学材料に用いられているが、ガラスの溶融・成形には高い温度を必要とするため、一般のユーザーが自由に成形することは難しい。一方、有機高分子(樹脂)は、耐熱性、耐光性、光透過性はガラスに劣るものの、成形温度が低く、かつ、安価なため、その特徴を生かし、LED用の封止剤やレンズなどの光学材料に用いられている。
産総研と石塚硝子は、平成26年度より、NEDOの研究テーマのひとつ「ガラス部材の先端的加工技術開発」において、500℃程度で溶融可能なガラスの開発を進めてきた。開発したその基本プロセスについては、2017年4月に開催された第2回高機能セラミックス展で石塚硝子が発表した。今回、同手法についてさらに実用化に向けた開発を進め、ガラスの耐水性などの物性値向上に取り組んだ。
今回開発された技術では、常温で流動性を示すリン酸と、物性を制御するための種々の金属化合物を原料とし、ガラスの前駆体液を調製する。これを加熱すると、500℃程度で流動性を示すガラス融液が得られ、型に流し出し冷却することでガラスが得られる。ガラスの屈折率などの物性は、前駆体液に加える添加物で調整できる。
さらに、組成及びプロセスを検討・改良することで、低融性、耐水性、耐光性、耐熱性を併せ持つガラスの開発に成功した。今回開発したガラスは、有機物を含まない材料でありながら、低温で軟化するため(ガラス転移温度:約235℃、屈伏点:約260℃)、低温で成形加工できる。
このたび開発されたガラスは低温で成形可能であり、耐熱性と耐光性を併せ持つため、LED用のレンズや封止材としての利用が期待できる。また、低温で作製・加工できるため、低温の溶融設備しか保有していない幅広いユーザーが利用でき、様々な型を用いた多様な形状のガラスが比較的簡便に作製ができる。これにより、現在エンジニアリングプラスチックが用いられている分野でも、将来的に、優れた耐光性・耐熱性を持つガラスが活用される可能性が広がった。
今後は、開発した低融点ガラスの実用化を目指し、構造解析を基にした反応プロセスの最適化や、用途に合わせた材料設計などの検討を進めるという。また、石塚硝子ではレンズ、封止剤などの光学用途を想定しているが、光学用途にとらわれない幅広い応用を検討していく予定だということだ。
なお、同技術によるサンプルは、2月14日~16日に東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2018 第17回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」で展示予定される。