国立がん研究センターは、40~69歳の男女約10万人を対象に自覚的ストレスとがん罹患との関連を調査した結果、自覚しているストレスレベルが高いと、がんの罹患リスクが高くなり、特にそれは男性で強くみられることが分かったと発表し、国立がん研究センターにて報道陣向けの説明会を実施した。
同成果は、国立がん研究センター 社会と健康研究センター コホート連携研究部長の井上真奈美氏らによるもの。詳細は、英国科学誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載された。
今回の研究は、1990年、もしくは1993年に所定の10保健所管内(岩手県二戸、長野県佐久など)に在住していて、かつがんに罹患していない人を対象に行われた。対象者約10万人には、調査開始時とその5年後に「日常あなたの受けるストレスは多いと思われますか?」というアンケートを実施し、その回答の組み合わせから6つのグループに分け、ストレスとがん罹患リスクとの関連を検討した。(ただし、両方のアンケートの回答者は約8万人)
その結果、男女別ではストレスとがん罹患リスクとの高い相関性は見られなかったが、男性で大きな関連性が見られることが分かった。特に男性グループにおいて、常に自覚的ストレスレベルが高いグループは、常に自覚的ストレスレベルが低いグループに比べ、全がんの罹患リスクが11% 上昇していた。
さらに、自覚ストレスレベルが高くなった、もしくはいつも高いと回答した調査対象者の「がんの家族歴」「飲酒・喫煙」「体系」などと合わせてみると、がん家族歴がある人、多量飲酒者、現在の喫煙者、肥満の人などにおいて、より高い罹患性が確認された。
そのほか、発症するがんの中でも、肝がん・前立腺がんで自覚的ストレスが高いとリスクの上昇が見られたという。動物実験では、免疫機能の低下を通じてほかの肝疾患を発症し、発がんに至ることが報告されていることから、肝がんは特にストレスの影響を受けやすい可能性が考えられるとのことだ。
説明を行った井上氏は、「これらの結果により、長期的にみると、特に男性で、自覚的ストレスレベルが高いとがん罹患リスクが増加することが考えられる」とコメント。しかし、同成果はあくまで1つのエビデンスに過ぎないともしており、今後、ストレスとがんに関する研究を進めるときの一助となれば、などとした。