新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、従来の方法に比べ、機械特性を飛躍的に改善した難燃性マグネシウム合金押出材の作製に成功したと発表した。
従来製法による難燃性マグネシウム合金(左)と、新たな熱処理技術に供した合金(右)のビレットと押出材の組織。新製法で作製した場合は球状化した晶出物だけが分布することが確認できる。(出所:NEDOプレスリリース) |
今回開発された技術は、難燃性マグネシウム合金を作製する際に内部に生成する結晶の析出物(晶出物)を新たな熱処理技術により球状化・硬化し、破壊の起点となることを抑制するもの。同技術は、NEDOと、新構造材料技術研究組合(ISMA)の組合員である産業技術総合研究所、不二ライトメタルおよび再委託先である戸畑製作所が共同で開発し、同技術の詳細は、11月4日~5日に開催された軽金属学会第133回秋期大会で発表された。
マグネシウム合金は、実用金属中で最も軽く、優れた比強度を有することから、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)と並び次世代の構造材料として注目されているが、燃えやすく加工性が悪いなど、従来の汎用的な構造材料のアルミニウム合金と比べて劣る欠点がある。それらを改善するためには、イットリウムやネオジムなどのレアアースを合金に添加するのが有効だが、レアアースの添加は素材コストを高騰させるため、ごく一部の用途に限られている。そのため、鉄道車両部材などへ応用するためには、難燃性と加工性(特に延性)に優れたマグネシウム合金の開発を、資源供給不安の少ないレアアースフリーにより実現することが求められている。
従来の鋳造時における熱処理技術では、難燃性マグネシウム合金を作製する際に押出し素材(ビレット)の内部に生成する晶出物を起点として破壊が起こり、高い強度や伸びが得られないことが課題となっていた。そこで、産総研の組織制御技術、不二ライトメタルの押出技術、戸畑製作所の鋳造技術によって、晶出物を球状化・硬化させる新たな熱処理技術の開発に成功したという。
新旧製法により作製した押出材の引張試験の結果。新製法で作成した合金は、従来の方法で作製したものとほぼ同じ引張強度を示しつつ、約50%高い伸びを示した。これは鉄道車両などで利用されている高強度アルミニウム合金に匹敵する機械特性となる。(出所:NEDOプレスリリース) |
今回の成果により、今後、高い難燃性が必要とされる鉄道車両部材や建築部材への難燃性マグネシウム合金の適用拡大が見込まれ、鉄道車両の抜本的軽量化が期待されるという。また、今後は、同技術をスケールアップし、難燃性マグネシウム合金押出材の実用化に向けた技術開発に取り組んでいくということだ。