多くの部門が独自に業務を遂行し、それぞれのデータが牧草や肥料を保存する窓の無いサイロのように、大量に積み重なる。"そこにデータは置いてあるよ"とだけ言われても、新しく部署に配属された従業員や新入社員は、無駄な時間の浪費と心理的な焦りに晒される。"サイロ化"はデータの有効活用はもちろん、働き方をも阻害してしまう。コンピューターが持つ能力は、これを解決する手法を様々なレイヤーで提供する。

IBM Watsonは、自然言語処理と機械学習を使用して"人間を支援する"プラットフォームとして世界各国で提供されているが、これを別の次元へと引き上げる。2016年2月に日本語版Watson APIが発表、以来数多くの事例が奏功しており、その一部は日本IBMの公式サイトでも公開されている。ワード文書、PDF、Webページなど我々が日常的に利用する大量の非構造化データからの優れた洞察を機械学習とともに可能としてきた。サイロ化した大量の業務データを従業員の理解できる形で導き出すという役割は、部署のベテラン社員が奢ることなく淡々と的確に質問に応えてくれることに匹敵するに違いない。

ソフトバンクのIBM Watson紹介Webページ

ソフトバンクは、IBM Watsonを活用した企業業務効率化を支援するパッケージ型のソリューションを12種類提供しているが、4日新たに「CloudAI チャットボット」(開発: JBCC/11月よりサービス開始予定)と「Third AI コンタクトセンターソリューション」(開発:日本サード・パーティ)の2つのソリューションをラインナップに加えたことを発表した。

「CloudAI チャットボット」は、インタフェースにLINE WORKSを採用し、LINEと同じ操作で社内基幹/情報系システムとの連携が可能になる。慣れ親しんだLINEインタフェースで社内に蓄積した情報のサイロから有意な情報を回答として得られるようになるチャットボット。「Third AI コンタクトセンターソリューション」は、LINEの法人向けカスタマーサポートサービス「LINEカスタマーコネクト」に対応するチャットボット。IBM WatsonのAPIであるConversationを活用し、質問を聞き返すなど複雑なやりとりが行われるカスタマーサポート向けのソリューションで、Elastic社のログデータ解析可視化ツールKibanaを用いたレポーティング機能も搭載する。

CloudAI チャットボットの利用イメージ(同社内公式サイト)

Third AI コンタクトセンターソリューションの利用イメージ(同社内公式サイトより)

パッケージ型ソリューションは、自社開発に比べ低価格で導入できるメリットや、できるだけ早く効果を得るためのサポートなど実践的な改革には欠かせない存在。ソフトバンクは、2015年2月に日本アイ・ビー・エムとの戦略的な提携に合意。同社の特設サイトには、IoTやAI、スマートロボットにも注力する同社が、"人間を支援する"という明確な目的意識を設計思想の中心とする理念への共鳴から戦略的な合意に至ったという趣旨とともに各ソリューションが紹介されている。機械に任せられるものは任せて、本来の業務に向かえるということは、働き方改革にも大きく寄与していくことになる。