GPU「PowerVR」やCPU「MIPS」を手掛ける英Imagination Technologies(IMG)は、中国資本の米Canyon Bridge Capital Partnersに、MIPS事業を除いてすべて売却することで合意したと9月22日(米国時間)に発表した。

Canyon Bridgeは、先だってトランプ米大統領の命令でLattice Semiconductorの買収を拒否された中国の国策投資会社の米国出先機関のようなベンチャーキャピタル(本社はシリコンバレーのパロアルトで北京にもオフイスを設置している)である。同社のシニアアドバイザーには、元SMICの社長で、現在、中国に300mm半導体量産工場の新設を目指して活動しているDavid Wang氏が就任している。

Appleとの取引中止で経営難に陥っていたIMG

Appleは長年にわたって、iPhone向けSoCのGPUコアとして、ImaginationのPowerVRを採用してきたが、2017年4月、突如AppleがiPhoneへのGPUコアの搭載を2年以内に終了させるとIMGへ通知したことを受け、IMGの株価は急落。MIPSの売却先を模索すると発表した後、会社そのものを売却すると発表するなど、経営危機が囁かれるようになっていた。

IMGのビジネスの大半を実際に買収するのは、Canyon Bridgeが買収目的のために英国に設立したCFBI Investmentで、IMGの発行済み株式を現金で買い取る。買収総額は約5億5000万ポンド(約831億円)とされている。

ビジネスの大半としたのは、CFBI InvestmentおよびCanyon Bridgeは、米国に拠点を置くCPUコアのMIPS事業については買収をしないためだ。MIPS事業は、IMGが米MIPS Technologiesを2013年2月に買収して引き継いだ事業だが、こちらは、米国資本のTallwood Venture Capitalに6500万ドル(約73億円)で売却するという。新しいMIPS事業会社名はTallwood MIPSとなる。TallwoodはMarvellやBroadcomなど米国内の半導体企業に対しても出資をしている会社で、中国国内にも投資目的のオフィスがある。

Canyon Bridgeは、MIPS事業を含めたIMGのすべてを一括して買収したいところであったが、さきのLatticeの件もあり、米国を本拠とするMIPS事業についてはあきらめたようだ。

Canyon Bridgeが買収することにしていた米Lattice Semiconductorをトランプ大統領が大統領令をだして拒否権を発動したばかりで、あきらめざるを得なかったようだ。

米国政府も日本政府も中国の国策資本による自国の半導体企業買収に警戒感を強めており、中国勢は、東芝メモリ売却に関しては、応札さえもあきらめざるを得なかった。しかし、中国勢は、決してあきらめているわけではなく、ありとあらゆる手段を講じて中国への最新技術導入を続けるだろう