列車の遅延回復と小惑星探査機「はやぶさ」の技術に端を発した電力デマンド制御に関わる手法を開発中である宇宙航空研究開発機構(JAXA)、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)および東急テクノシステムは、今回、その基礎検証のため、列車走行試験を行ったと発表した。

試験車両の写真

開発中の制御手法は、遅延を効率的に回復させる方法の確立を目指しており、それを実現するうえで制約となる電力デマンドを実時間で管理することできるという。また、遅延量に応じて列車ごとに優先度が設定され、電力デマンドを独立かつ並列に分け合うことで、最も遅延の大きい列車を最優先にダイヤ回復させることができるという。

今回の列車走行試験は、5月14日、5月21日、5月28日の3日間にわたる深夜の時間帯に、田園都市線の長津田駅~中央林間駅で、試験車両2編成により実施。具体的には、各列車がその時点までに影響を与えた電力デマンド量を、力行ノッチオフ速度(力行から惰行に移行する速度)を積算して評価をし、その寄与に基づいて総電力デマンドを制御することを試みた。

列車走行試験における列車運行電力デマンド制御の手順

その結果、制御開始時刻から約30分間で、制限値付近まで電力デマンドを下げ、その後の約1時間、電力デマンドを制限値付近で管理できることを実証した。今回の走行試験により、最も遅れている列車の遅延を最優先に回復させる、遅延回復制御を行う準備は完了したと考えており、利便性と電力管理の両立がはかれるめどを得たとしている。

なお、次回以降の試験にて、今回確認した電力制御と、最終目的である遅延回復制御を、同時に実証する予定とのこと。