インターステラテクノロジズ(IST)は7月6日、都内で記者会見を開催し、新型の観測ロケット「MOMO」の打ち上げ実験の概要について説明した。射場は北海道大樹町で、時間帯は7月29日の10:20~17:00を予定。民間開発の日本のロケットとしては初めて、高度100kmの突破を目指す。

射点に立つ観測ロケット「MOMO」のイメージCG (提供:インターステラテクノロジズ)

同社は、2006年から宇宙事業を開始。2011年3月に、1号機「はるいちばん」の打ち上げに成功し、以降、大型化を進めてきた。従来の最高高度は、6号機「すずかぜ」の6.5kmだったが、MOMOでは一挙に、一般的に宇宙空間と言われる高度100km以上を狙う。同社の稲川貴大 代表取締役社長も、「これでやっと"宇宙企業"と名乗れる」と胸を張る。

同社の稲川貴大代表取締役社長(左)と堀江貴文取締役(右)

これまで打ち上げ実験に使用した機体。MOMOでサイズは2倍に

当初、同社は2016年中の打ち上げを目指していたが、新開発の推力1.2トン級エンジンの燃焼試験において異常燃焼が発生。原因の究明、および問題の解決に時間がかかり、打ち上げが遅れていた。エンジンの開発は3カ月前に完了しており、打ち上げに向けて、技術的にはほぼめどが付いたという。

120秒間のエンジン燃焼試験。ノズルの周辺から炎が出ているのは、エンジンのアブレータ冷却でガスが発生しているためで問題は無い

MOMOの大きさは、全長が約10mで、直径が50cm。打ち上げ時の重量は1150kgだ。エタノールを燃料、液体酸素を酸化剤として使う液体エンジンを採用しており、20kgのペイロードを高度100kmに打ち上げる能力がある。初号機の打ち上げでは、ペイロードとして、自社開発の試験装置を搭載する。

MOMOの仕様。大型化に伴い、初めて姿勢制御も可能となっている

飛行シーケンス。120秒間エンジンを燃焼させ、その後は慣性飛行となる

今回打ち上げるMOMOは、弾道飛行を行う観測ロケットである。高度100kmを越えても、地球を周回するまでの能力は無く、すぐに落下してくるが、ペイロードの海上回収が可能。同社は、微小重力実験、高層大気観測、エンターテイメントなどの用途で、商用化を目指す。打ち上げサービスの価格は、5,000万円以下を想定しているとのこと。

ただ、市場として大きいのはやはり衛星用ロケットで、同社も事業のメインとして狙うのはそこだ。超小型衛星の軌道投入に使えるロケットの開発には、すでに2016年から着手しており、MOMOの打ち上げを成功させ、開発に弾みを付けたい考え。衛星用ロケットは、2020年ころの初打ち上げを目指すという。

観測ロケットと衛星用ロケットの違い。必要なエネルギーが大きく異なる

まず観測ロケットを成功させ、衛星用ロケットの開発に繋げていく

同社の創業者で取締役でもある堀江貴文氏は、「我々のようなベンチャーにとっては、今がまさにデスバレー。最初に越えなければならない難所だが、これさえ乗り越えられれば、衛星用ロケットに繋がる技術を手に入れることができる」とコメント。そのためには、まだ人材と資金が不足しているとして、支援を訴えた。

なおMOMO初号機の打ち上げ日であるが、天候などの理由により、7月29日に実施できなければ、翌日の30日に延期される。しかし、今回の予備日はこの1日だけとなっており、この日も打ち上げができなかったときには、一旦中止し、次の挑戦はしばらく後になる模様だ。

ロケットの射場は、北海道大樹町の海沿いにある。当日は、射点を直接見ることができる高台に特設会場「SKY HILLS」を設置。有料ではあるが、一般からの見学を受け付ける。射点からの距離は約4km。また直接射点は見えないものの、近隣の多目的航空公園にてパブリックビューイングも開催される予定で、こちらは無料で参加できる。

打ち上げ実験のウィンドウ。いくつかの時間帯に分けられている

特設会場「SKY HILLS」を用意。申し込みは専用のWebサイトから

「これまでの国による宇宙開発ロケットは、最高性能を求めるフェラーリ。それをより身近に、誰でも使えるスーパーカブにしたい」と意気込みを語る稲川社長。「今までもロケット開発の難しさは痛感してきたが、それを改めて感じた1年だった。打ち上げに向け、一歩一歩丁寧な仕事を心がけたい」とコメントした。