昨年10月、ワークスタイルの変革を目指し、東京本社にカフェテリア型の社員食堂「デジタルカフェテリアl」を新設した日本オラクル。同社は2016年には「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」を受賞しており、古くから働き方改革に取り組んできた。

日本オラクル 理事 社員エンゲージメント室長を務める赤津恵美子氏は、「当社は生産性の向上を目指し、働き方改革を行っています。政府は出産・育児の促進、ワークとライフの両立を背景に、働き方改革として『残業の削減』や『休暇の取得』から取り組んでいますが、それだけでは先細りしてしまいます。ムダを省くだけではなく、企業が成長を持続するには、社員のスキルを上げ、業績を向上させ、イノベーションを起こし続けていくことが重要です」と語る。

日本オラクル 理事 社員エンゲージメント室長 赤津恵美子氏

同社では生産性を向上させるため、インプット(所要時間・人数)を減らし、アウトプット(成果の量・質)を増やすことを同時進行で行っている。

インプットに当たる「所要時間を減らす」ため、「ITの活用」「テレワークの活用促進」「ノウハウ共有」により、ムダを削減している。あわせて、心身の健康や生活の充実のため、休暇取得を促進している。

一方、アウトプットに当たる「成果の質と量を上げる」ために、「能力開発」「適材適所の実現」「退職者の削減」を行っている。また、「協働しやすく開放的なオフィス、副業が可能であること、社員の提案を形にする仕組みにより、イノベーションが促進されていると感じます」と赤津氏は話す。

イノベーションを生み出すための策とは?

アウトプットの増加をもたらすイノベーションを生み出すための具体策としては、「働く場所の改革」「副業の認可」「他部門との対話の向上」などがある。

「働く場所(オフィス)」に関する施策の代表例は、先にも挙げた「社員食堂」の新設だ。ちなみに、正式名称は「デジタルカフェ」となる。大型プロジェクター、大勢で会食が可能なテーブル、半個室、完全個室など、多様なタイプの部屋が設置されており、さまざまな目的での利用が可能だ。

ランチをとりながら会議をしてもよいし、窓際の席で一人で集中して仕事に励んでもよいというわけだ。

さまざまな席、部屋が設けられているデジタルカフェ「Waterfall」

また、最近メディアで取り上げられる機会が増えている「副業」(オラクルでは「兼業」と呼んでいる)は、10年ほど前から認められているそうだ。本業を生かしてベンチャーで働く人や大学で教えている人、趣味を生かしてスポーツインストラクターをやっている人など、約100名が届け出をしているとのこと。

例えば、IoTサービス「bible」に関わっている社員は「IoTサービスはオラクルで習得したシステム設計のノウハウがあるからできることであり、bibleで実証しているシステム構築のコスト感覚といったお客さまの期待を理解し、オラクルに還元できる」とコメントしており、本業と副業の相乗効果は大きいようだ。

そして、「他部門との対話の向上」に向けては、社員の提案を形にする仕組みとして、プロジェクト「Mission-85」がある。「『働きがいを上げるためにこんなものがあったらいいな』と思っていても、それだけでは実現しませんが、スポンサーの役員や必要があれば予算をつけて支援することで実現させています。それが、Mission-85プロジェクト」と、赤津氏は話す。

オープンキャンパスでは、キャリヤやイクメンなどのテーマごとに集まってセッションを行い、部署を越えた交流が行われた。普段、付き合いがない他部門の社員や役員と交わることで、新たな気づきやネットワークを得て、それがイノベーションにつながるのではないかというわけだ。

始まる前は冷ややかな見方もあったそうだが、いざやってみると「参加してみなければわからないよさがある」と盛況に終わったという。