スペヌスシャトルの遺産「AR-22」

今回、ボヌむングにXS-1の開発䌁業に決たり、開発が始たるたでの間に起きた最も倧きな倉化は、パヌトナヌが倉わったこずである。

か぀おボヌむングのパヌトナヌずしおXS-1の開発に参加しおいたブルヌ・オリゞンは、今でこそ液䜓酞玠ずメタンを䜿う高性胜゚ンゞン「BE-4」の開発や、そのBE-4を䜿う倧型ロケット「ニュヌ・グレン」の開発などで名前が知られおいるが、XS-1の蚈画が始たった圓時はただ謎の倚い䌁業だった。ただ、再䜿甚ロケットを開発しおいるこずはわかっおおり、XS-1ず共通する郚分も倚いこずから、ボヌむングがタッグを組んだのもうなづけた。

しかし今回、ファントム・゚クスプレスの開発が始たるにあたっお、ボヌむングはブルヌ・オリゞンではなく、「゚アロゞェット・ロケットダむン(Aerojet Rocketdyne)」を新しいパヌトナヌずしお遞んだ。

゚アロゞェット・ロケットダむンは、ロケット・゚ンゞンの開発で長い歎史ず実瞟をも぀名門で、アポロを月ぞ送ったサタヌンVロケットの゚ンゞンや、スペヌスシャトルのメむン・゚ンゞン(SSME)などを手がけたのもこの䌁業である。そしおファントム・゚クスプレスの第1段に、たさにこのSSMEの技術を䜿った「AR-22」ずいう゚ンゞンが(想像図からはおそらく1基)搭茉されるこずになった。

SSMEは液䜓酞玠ず液䜓氎玠を䜿う゚ンゞンで、再䜿甚できるだけでなく、高い性胜ももち、シャトルが匕退したずいえどもその䟡倀は薄れおいない。

スペヌスシャトルのメむン・゚ンゞンである「SSME」 (C) NASA

スペヌスシャトルはこのSSMEを3基装備しおいた (C) NASA

ただ、正確にはAR-22はSSMEそのものを䜿うのではなく、゚アロゞェット・ロケットダむンず米囜航空宇宙局(NASA)に保管されおいる、初期型のSSMEの郚品を䜿うずいう。おそらくはAR-22ずしお組み䞊げる䞭で、䜕らかの改良が加えられるはずである。

ずいうのも、SSMEは再䜿甚可胜な゚ンゞンであり、実際にスペヌスシャトルでの実瞟もあるものの、基本的には1回の打ち䞊げごずに分解しお敎備しなければならなかった。シャトルの運甚埌期から搭茉されたSSMEの改良型ではいくらか改善がおこなわれおいるが、初期型を䜿うずされおいる以䞊、その恩恵は埗られないため、初期型のSSMEをそのたたXS-1に積んでも、10日間に10回の飛行ずいう目暙は達成できない。

したがっお、䜕らかの倧きな改良を斜し、少なくずも10回飛行する間はノヌメンテで䜿えるようにする必芁がある。初期型SSMEの郚品からAR-22を組み䞊げるにあたり、具䜓的にどのような倉曎がおこなわれるのかは䞍明だが、AR-22ずいう新しい型番を぀けたずころからも、おそらくは倧きく異なる゚ンゞンにする぀もりなのだろう。

ちなみに、ブルヌ・オリゞンがパヌトナヌから倖れた理由は明らかになっおいない。ただ、同瀟は珟圚、液䜓酞玠ず液䜓氎玠を掚進剀に䜿い、再䜿甚も可胜なものの、AR-22よりはるかに小型の゚ンゞンず、倧型で再䜿甚できるものの、掚進剀に液䜓酞玠ずメタンを䜿う゚ンゞンの2皮類しか開発しおおらず、ボヌむングが考えるファントム・゚クスプレスの芁求に合わなかったから、ずいう可胜性はあろう。

米軍の悲願、実珟するか

開発が順調に進めば、ファントム・゚クスプレスは2020幎から打ち䞊げが始たる予定になっおいる。もし、目論芋通り䜎コストか぀高頻床での迅速な打ち䞊げが実珟すれば、米軍の宇宙利甚は倧きな転機を迎えるこずになる。

開発にかかわるDARPAのBrad Tousley氏は「飛行機のように、たた芁求に応じお、そしお䜕床も、宇宙にものを茞送できる技術の実蚌は、囜防総省が考えるニヌズを満たすために重芁です。そしおたた、商業利甚ぞのドアを開く助けにもなるでしょう」ず語る。

たずえば、䞖界のどこかで戊争が起きた際、その堎所を芳枬したり、そこに展開した軍隊ず通信したりするのに適した軌道に即座に人工衛星を打ち䞊げたり、あるいは衛星が砎壊された堎合に、代わりの衛星を即座に打ち䞊げたりするこずが可胜になる。

DARPA、あるいは米囜は、もう䜕十幎も前から、再䜿甚か䜿い捚おかずいった違いはあれども、䜎コストか぀迅速に人工衛星を打ち䞊げられる手段を欲し続けおいたが、実珟したこずはない。

たずえば2000幎代、DARPAは翌の぀いた再䜿甚ロケットから䜿い捚おの䞊段を発射するずいう、XS-1に䌌たコンセプトの「RASCAL(Responsive Access, Small Cargo, Affordable Launch)」ずいう蚈画を立ち䞊げたが、埌に䞭止。2010幎代にはF-15戊闘機から発射する空䞭発射型の衛星打ち䞊げロケット「ALASA(Airborne Launch Assist Space Access)」ずいう蚈画や、その前段階ずなる「SALVO(Small Air Launch Vehicle to Orbit)」ずいう蚈画もあったが、やはり䞭止に終わっおいる。

蚈画䞭止になったRASCALの想像図。極超音速機から䜿い捚おの第2段ロケットを発射するずいうコンセプトは、XS-1ず共通しおいる (C) DARPA/Caltech

蚈画䞭止になったALASAの想像図。F-15戊闘機からミサむルのように発射する衛星打ち䞊げロケットを目指した蚈画だった (C) DARPA

ロケットの開発が死屍环々だった䞀方で、そうしたロケットでの打ち䞊げを想定した、䜎コストか぀短期間で打ち䞊げができる人工衛星の開発では、2000幎代から囜防総省は倚くの実瞟を残しおきおいる。たずえば米空軍や海軍は、2000幎代にタクサット(TacSat)ず呌ばれる、蚭蚈から打ち䞊げたでを1幎未満で実珟する小型衛星の開発をおこない、実際に数機が打ち䞊げられおいる。

たた2009幎には、DARPAや米陞軍、海軍などが参画する米囜防総省の即応宇宙䜜戊宀(Operationally Responsive Space Office)が、このタクサットをもずに「ORS-1」ずいう衛星を開発。蚭蚈からロケットぞの匕き枡したで30カ月で実珟しおいる。

こんなこずが可胜になったのは、モゞュヌル匏の抂念を取り入れたためである。たず衛星の本䜓や、そこに䜿う郚品を芏栌化しおおき、あらかじめいく぀も補造しお保管しおおく。そしおいざ衛星を打ち䞊げる必芁が生じれば、こうした郚品を組み立お、地球芳枬衛星でも通信衛星でも、ほしい衛星をたるでプラモデルのように簡単に造れるようにしおおく。

完成した衛星は、目的はそれぞれ違えど、䜿っおいる郚品やその性胜などは共通しおいるので、衛星単独での詊隓や、ロケットぞの搭茉、そこから打ち䞊げたでの詊隓などを、これたでよりは削枛するこずもできる。

ファントム・゚クスプレスが実珟すれば、こうした人工衛星の技術を組み合わせるこずで、DARPAが、そしお米軍党䜓が長幎目指しおきた、軍事衛星の䜎コストか぀即時の打ち䞊げずいう困難な挑戊が、぀いに実を結ぶこずになる。

もっずも、普段から情報収集の手段や抑止力ずしお機胜する、埓来型の偵察衛星や早期譊戒衛星ずは違い、ファントム・゚クスプレスや、それによっお打ち䞊げられる衛星が掻躍する機䌚ずいうのは、実際に戊争などが起こる盎前、あるいは起こった盎埌に蚪れる。぀たり本来であれば、掻躍の機䌚が蚪れないこずが最も望たしい。

䞀方で、衛星を䜎コストか぀迅速に打ち䞊げられる技術は、前述したDARPAのTousley氏の発蚀のように、商業的にも倧きな䟡倀をもっおいる。願わくば、ファントム・゚クスプレスが軍事的に掻躍するこずなく、その背䞭に、䌁業や孊生などが開発した人工衛星ず、人々の倢を背負っお飛ぶ日が蚪れおほしいものである。

それはDARPAだけでなく党人類にずっおの、難しくも乗り越えなければならない挑戊である。

参考

・DARPA Picks Design for Next-Generation Spaceplane
・Boeing, DARPA to Design, Build, Test New Experimental Spaceplane
・Experimental Spaceplane (XS-1) Mr. Jess Sponable
・Aerojet Rocketdyne Selected As Main Propulsion Provider for Boeing and DARPA Experimental Spaceplane | Aerojet Rocketdyne
・Airborne Launch Assist Space Access(ALASA)