大阪大学(阪大)は5月2日、コロイドガラスと呼ばれる材料に対して特定の周波数の音を与えることで、結晶化が急速に進展する現象を発見したと発表した。

同成果は、大阪大学大学院基礎工学研究科 中村暢伴助教らの研究グループによるもので、5月2日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

固体を加熱すると固体中にはさまざまな周波数の原子振動・分子振動が励起され、これらの振動によって結晶化が引き起こされる。したがって一般的に、原子や分子がランダムに配置したガラスを結晶化させる場合は、熱処理が使われる。

コロイドガラスとは、水溶液中において1μm程度の大きさの微粒子が集まってできた集合体。その微粒子は、ガラス内部の原子配置のようにランダムに配置しているが、すべての現象がゆっくりと生じる点が特徴となる。そのため、コロイドガラスでは原子・分子振動に相当する微粒子振動の周波数が低く、既存の装置を使ってアモルファスの結晶化を検証することが可能となる。

同研究グループは今回、この特徴を利用して、周波数を変えながらコロイドガラスに振動を与えるという実験を行った。この結果、今回のサンプルにおいては、75Hz付近の振動が結晶化を急速に進展させることが明らかになった。この現象は、過去に提案されている結晶化理論では説明することができないため、メカニズムの解明が今後の課題となる。

コロイドガラスの結晶化の模式図(上)と実験結果(下)。30、70Hzでは振動を与えても変化がみられないが、75Hzの振動を与えたときのみ短時間に結晶化が進行する (出所:阪大Webサイト)

今回の成果について同研究グループは、音を使って結晶化を引き起こす手法の実現可能性を示すものであり、熱処理にかわる新しい超高強度材料作成手法につながることが期待されると説明している。