名古屋大学(名大)は4月27日、角度依存性のない構造色を示す鳥の羽を参考にして、無機微粒子と高分子電解質を用いた退色性の少ない構造発色性顔料および色相が変化する光学デバイスを開発したと発表した。
同成果は、名古屋大学大学院工学研究科 竹岡敬和准教授、東京理科大学 吉岡伸也准教授らの研究グループによるもので、4月27日付のドイツ科学誌「Advanced Materials」に掲載された。
ステラ-カケスなどの鳥の鮮やかな構造色を示す羽には、サブミクロンサイズの特定の大きさの細孔構造があり、その細孔は短距離秩序を持って等方的に分布したアモルファス状態となっている。
各細孔によって散乱した光は、秩序構造があることで干渉して強め合う。この結果、羽は構造色を示す可能性を持つが、非干渉性の多重散乱が可視光の全域に生じうるため、その影響が強ければ、羽が白っぽく見えてしまう場合もある。青いステラ-カケスの羽は、可視光の波長の長さで屈折率の変化に短距離秩序を有する微細構造とその背後に存在する黒色のメラニン顆粒の利用により、鮮やかな角度依存性のない構造色を示している。
今回の研究では、スケラーカケスの羽の構造を模倣した構造発色性材料を作製することで、短距離秩序を有する微細構造から生じる角度依存性のない構造色に対する背景の黒色物質の影響について調べた。同構造発色性材料は、黒色の石英基板上に粒径の揃ったサブミクロンサイズの球形シリカ粒子からなるコロイドアモルファス集合体を、高分子電解質とLayer-by-Layer法(LbL法)によって融合することで作製した。
この結果、黒色のガラス基板上に作製したコロイドアモルファス集合体は、膜厚の増大とともに角度依存性のない鮮やかな構造色を示すようになり、膜厚が約1~2μmの場合にその構造色は最も鮮やかに見えるようになることがわかった。
また、この発色メカニズムを利用した顔料を作製するために、粒径が5μmの黒色微粒子を芯材として利用し、その周りにLbL法によって、同様のコロイドアモルファス集合体を形成。この結果、用いたコロイド粒子の大きさに応じて異なる色合いを示す構造発色性顔料が得られることが明らかになった。
さらに同研究グループは、この発色メカニズムを利用して、構造色の発色性が切り替えられる光学デバイスの構築にも取り組んだ。コロイドアモルファス集合体の背景として、2枚の偏光板を利用した黒色の度合いを可変できるシステムを用いると、その黒色の度合いに応じた構造色の鮮やかさの制御ができることがわかった。
同研究グループは、今回の成果をふまえて、光の波長サイズの秩序構造の膜厚の制御とその背景に黒色物質を置くことの組み合わせにより、安全安価で非退色性の有機-無機融合顔料の調製や、色相の可逆な変化ができる光学デバイスの構築が可能になると説明している。