千葉大学は9月26日、クジャクの羽の発色機構のもとになる微細構造とそれらを構築しているメラニンを構造・素材ともに模倣することで、生物の体表などに表れる「構造色」を基盤としたフォトニック材料を作製したと発表した。

同成果は、千葉大学大学院工学研究科 桑折道済准教授と修士課程の河村彩香氏、山階鳥類研究所 森本元博士らの研究グループによるもので、9月23日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

鳥の羽などにみられる構造色は、メラニンが形成する粒子状の微細構造に太陽の光などがあたることでメラニン顆粒の黒色が散乱光を吸収した結果、発現する。したがって、メラニンを模倣したコロイド粒子を人工的に再現できれば、鮮やかで視認性の高い構造色の発現が期待される。

同研究グループはこれまでに、メラニンの前駆体であるドーパの模倣物質「ドーパミン」を重合して得られる黒色の高分子「ポリドーパミン」を、大きさが均一な黒色コロイド粒子として得ることに成功しており、ポリドーパミン粒子のみを用いて構造色の発現が可能であることを見出していた。しかし、構成成分すべてをポリドーパミンで作製したコロイド粒子は黒色度が高すぎるため、インクとして利用する際に重要な固体状態での発色が暗くなってしまうという課題があった。

そこで今回、黒色度を制御した粒子を作製するために、ポリスチレン粒子をコアとし、その周りをポリドーパミンで被覆したコア-シェル型粒子を作製。ポリドーパミンシェル層の膜厚を変化させることで、黒色度の制御を可能にした。また、このコア-シェル型粒子を用いて構造色ペレットを作製したところ、コア粒子の大きさ(221~287nm)とポリドーパミンシェル層の厚み(0~20nm)を変えることで、ほぼすべての色を生み出すことに成功した。

さらに、ポリドーパミンシェル層の厚みによって粒子表面の粗さが変わり、粒子の配列構造を制御できることも明らかになった。この結果、見る角度により色が可変な「虹色構造色」と、色が変化しない「単色構造色」を作り分けることが可能となった。

構造色は色褪せせず独特の光沢を有することから、同研究グループは今回の成果について、構造色を用いる次世代インク開発の基盤となる重要な研究成果であると説明している。

コア粒子の大きさ(221~287nm)とポリドーパミンシェル層の厚み(0~20nm)を変えることで、視認性の高い虹色構造色と単色構造色を実現した