台湾中央研究院天文及天文物理研究所(ASIAA)のヒョスン・キム氏をはじめとする国際研究グループは、アルマ望遠鏡による観測で、「ペガスス座LL星」の周囲にガスの渦巻き模様をはっきりと描き出すことに成功した。同成果の詳細は、3月1日付けの英国科学誌「Nature Astronomy」に掲載された。
地球から約3400光年彼方に存在するペガスス座LL星は、直径が太陽の200倍以上に膨らんで盛んにガスを放出している赤色巨星であり、惑星状星雲になる一歩手前の段階にある。また10年前にハッブル宇宙望遠鏡で撮影された画像から、完璧な渦巻き模様を持つ星として知られている。
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したペガスス座LL星の周囲の渦巻き模様は、ガスと一緒に星から放出された塵が、星からの光を散乱することで見えていたものであったため、渦巻き模様がどのように実際に動いているかを直接測定することはできなかった。一方アルマ望遠鏡は、星の周囲を取り巻くガスに含まれる一酸化炭素やHC3N分子が放つ特定の周波数の電波を捉えており、ドップラー効果による周波数のずれからガスの運動を測定することができる。
今回、同研究グループは、アルマ望遠鏡を使い、ペガスス座LL星から継続的に噴出したガスが放つ電波を捕捉。コンピュータシミュレーションと観測結果を比較し、観測された渦巻き模様を作りだすためには、同星が連星をなしており、連星の軌道が非常に細長い楕円である必要があることを明らかにした。特に、アルマ望遠鏡の観測画像にもはっきりと表れている渦巻き腕の枝分かれが、細長い軌道を持つ連星系に特有の構造であるという。また渦巻きの間隔を測定することで、ペガスス座LL星を含む連星系の周期は約800年であることも推定された。
今回の成果についてキム氏は、「これほど美しい渦巻き模様が空に浮かんでいるなんて、本当にワクワクします。私たちの観測により、形の見事に整った渦巻き模様の構造を明らかにすることができました。そして、この形を説明する理論を構築することができました」とコメントしている。