既報のように、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月11日、同日8時48分に予定していたSS-520ロケット4号機の打ち上げを中止した。現時点で次の打ち上げ予定日は決まっておらず、今後、天候状況を判断し、関係各所との調整を経たうえで発表される予定だ。決定から中2日を開けるのが通例であるため、打ち上げは早くても14日以降になる見通し。
筆者は今日、7時半ころからプレス見学席にいたのだが、現地は時折、突風のような強い風が吹くような状況。前回のレポートでお伝えしたように、平均的に風が弱い時間帯ということで朝方の打ち上げになったのだが、残念ながら今回は風が強い日に当たってしまったようだ。
JAXAによると、今回の中止の理由は天候。同日8時40分から開催された最終のGO/NOGO判断会議において、「打ち上げ条件を満たさない可能性がある」と判断され、中止が決まった。
この中止の理由については、少し補足しておきたい。SS-520ロケットは誘導制御は行わないため、風の影響を受けて進路が変わってしまう。すると、分離した第1段や第2段が落ちてくる場所が予定からズレてくるわけだが、このズレが大きくなると、事前に通達してある落下予想区域を外す恐れがある。これは船舶や航空機の安全上、大きな問題だ。
第1段と第2段の落下予想区域 (JAXA 飛行安全計画より抜粋) |
なるべく予想区域の中央に落とすため、当日は射場上空の風向・風速を計測。そのデータをもとに、ランチャーの発射角を調整する。この計測には、地上風(高度1km以下)を見るのに超音波風速計、高層風(高度5~30km程度)を見るのに気球が使われる。気球は打ち上げの2時間前と40分前に放出される。
JAXA内之浦宇宙空間観測所の峯杉賢治所長によれば、今回問題となったのは風速そのものよりも、変動の大きさだったという。やや風が強くても、風向と風速が一定であれば、発射角の調整で補正しやすい。しかし、今回のように風向も風速も目まぐるしく変わってしまうと、対応は難しい。
前述のように、次の打ち上げ予定日はまだ決まっていないが、時間帯は今回と同じ7時20分~8時50分になる。SS-520ロケット4号機の打ち上げ時刻を決めるには、この1時間半の時間帯の中で、さらに以下の3つの条件を満たす必要があるそうだ。
- 第3段が通信に使うイリジウム衛星の配置が適切であること
- ラムライン制御時に太陽光が適切な方向から当たること
- 国際宇宙ステーション等に衝突する恐れがないこと
上記の1と3は日によって変わるため、打ち上げ可能な時刻は毎日異なる。11日は8時48分の1回しかチャンスがなく、この時刻になったのだが、多ければ5回ほど機会があることもあり、複数回ある場合、もし1回目の時間がダメなら2回目の時間に打ち上げをずらすという可能性もあるそうだ。
なおJAXA広報によれば、打ち上げの予定日は基本的に、その2日前に発表する予定だという。もし14日なら明日12日に発表があるはずだが、今のところ14日まで天気がすっきりしない予報が続いているため、打ち上げが15日以降にずれ込む可能性もありそうだ。