SC16は登録参加者1万1100名、出展ブースの数は349と参加者、展示ともに過去最高であったが、目立った展示は少ない感じの展示であった。このところ展示フロアに持ち込むハードウェアは減少傾向にあるが、今年は、さらにそれが進んだ感じの展示であった。NVIDIAは最大級のブースを構えていたが、ハードの展示は見当たらなかったし、Dellのブースもハードは無かった。

ドイツの自動車業界と関係の深いHLRSは、かつては大型のトレーラを持ち込んで、空気の流れのシミュレーション結果などを展示いたが、それがポルシェのセダンになり、昨年は車が無くなって、ガランとした展示になってしまった。しかし、今年は、ポルシェのスポーツカーが展示されており、すこし、展示予算が回復してきたのかもしれない。その他にもUNIVAなどスポーツカーを持ち込んだブースが3~4カ所あった。

今年はポルシェを持ち込んだHLRS

しかし、大型のトレーラトラックに詰め込んだ移動型のデータセンタを持ち込むような派手な展示は、過去のものとなってしまったようである。

端末を持ち込んで実演したり、パネルで研究成果などを展示するのは、それはそれで意味があるのであるが、パネルを読んで説明を聞き始めると、1カ所でそこそこの時間が掛かってしまう。それでは多くのブースを回れないので、いきおい、そのような展示は敬遠することになる。そのため、筆者が興味を持ったハードウェアの展示を中心としたレポートであるが、展示の様子を紹介したい。

富士通の液浸サーバ

富士通は、フッ素系の絶縁性液体に浸漬して冷却するサーバを展示していた。ただし、これは製品ではなく、試作品である。

PEZY/ExaScalerと同じアプローチであるが、タンクがプラスチック製になっている点と冷媒の沸点が130℃程度とPEZY/ExaScalerの冷媒より沸点が40℃程度低い点が異なる。こちらの冷媒の方が単価が多少安いとのことである。しかし、沸点が低いので、蒸発量は多く、蓋からの蒸気の漏れを減らし、ケーブルの引き出しはウオータートラップを通す構造にして蒸気の漏れを防いでいる。

富士通のフロリナート液浸サーバ

PEZY/ExaScalerのサーバはブリックと呼ぶ正方形のモジュールを16本挿入しているのでケーブルが多いが、富士通のサーバは2Uサーバを8台入れているので、ケーブルが少なく、すっきりしている。

また、PEZY/ExaScalerの液浸槽は分厚いステンレス製であるが、富士通はアクリルのような樹脂製である。冷媒だけでも500kg近い重量であるので、樹脂製のタガで補強している。

富士通の樹脂製の液浸層はタガがはめられている

NECのAurora

NECは、2018年に製品化するProject Auroraを前面に出した展示を行っていた。

Auroraを前面に出したNECのブース

そして、ベクタエンジンのモジュールとベクタエンジンを2モジュールを搭載する1Uサーバのプロトタイプを展示していた。Auroraについては、別の記事で紹介しているので、そちらを参照していただきたい

Auroraのベクタエンジンモジュール(右側手前)と2モジュールを搭載できる1Uサーバ

PEZY/ExaScalerの高電圧DC給電サーバ

PEZY/ExaScalerは、30フィート×30フィートと、NECと並ぶスペースのブースを構えた。なお、これは富士通や日立のブースよりも面積が広く、日本勢では最大級の面積となる。

液浸の展示は中央に見える1本のブリックだけで、理研に設置されているZettaScaler-1.6/1.8システムはパネルでの展示である。この写真では一部しか映っていないが、3面にショーケースを並べ、各種のブリックを展示していた。

日本勢としては最大級の面積となったPEZY/ExaScalerのブース

PEZY/ExaScalerのZettaScaler-1.8 に使用する新サーバは、液浸槽には380V DCを供給し、それを48V DCに落としてPEZY-SCnpボードに供給する高電圧DC給電サーバである。各PEZY-SCnpチップの給電は100Aを超える大電流であり、給電系のロスが馬鹿にならない。高電圧で供給すれば、電流は少なくて済むので、このロスを減らすことができる。

ZettaScaler-1.8システムでは、これまでの正方形の断面のブリックに変わり、幅広のモジュールに24枚のPEZY-SCnpボードを収容する構造になる。なお、このモジュールは、左が液浸層の底になるように挿入される。底に近い、左側のボードは、一番手前はInfiniBandのNICであり、その後ろのボードはXeon CPUやメモリを搭載していると思われる。

PEZY-SCnpボードにDC48Vを給電するZettaScaler-1.8。右側に12枚×2列のPEZY-SCnpボードが並ぶ。左のボードはCPU系である

次の写真は、PEZY-SCnpボードと、上記モジュールの左側となる液浸槽の底に配置される380Vから48Vに変換するユニットである。上の写真のヒートシンクの右側に見える2つの大きめの黒いモジュールが48Vから、PEZY-SCnpに供給する1V未満の電圧に変換するVICORのDC-DCコンバータである。

そして、下の写真が液浸槽の底の方に配置される380Vから48Vに変換するDC-DCコンバータである。これもVICOR製のDC-DCコンバータを使っている。

DC 48V給電のPEZY-SCnpボード。左の2個の大きめのモジュールが48Vからサブ1Vに変換するコンバータ

380Vから48Vに変換し、PEZY-SCnpボードに給電するコンバータ