12月14日から16日まで東京ビッグサイトで開催されているエレクトロニクス製造サプライチェーン総合展示会「SEMICON Japan 2016」では、技術系・ものづくり系スタートアップを集めた「INNOVATION VILLAGE」が開催されている。本稿では、「INNOVATION VILLAGE」の注目ブースを紹介する。

空中映像を実現する光学素子「DCRA」

パリティ・イノベーションズは、特殊なメガネなどを用いなくても、何もない空中に映像を浮かび上がらせられる映像技術を出展。これは、同社が開発した光学素子「2面コーナーリフレクタアレイ(DCRA)」によるもの。DCRAは素子内部に多数の鏡面を有し、隣り合う垂直な2鏡面で反射された光が空中の1点に集まり、結像するため空中に映像が浮かび上がる。また、指の位置を検出するセンサと組み合わせることで、空中映像を指で触って操作することが可能となる。ちなみに、アスカネットが「AIプレート」という似た技術を有しているが、AIプレートはガラスを用いるのに対し、パリティ・イノベーションズは樹脂を用いており、成形方法も異なる。

「DCRA」を用いたディスプレイの例

植物を傷つけずに受益の流量を測定

東大発ベンチャーであるKisvin Scienceは植物の導管内を流れる樹液の流量を非破壊で測定するセンサ「Sap Flow Sensor」を展示。同センサで取得した樹液データと、温度や湿度、日射などの情報を組み合わせることで、植物の生理状態を解析することができる。円柱状の枝または茎があれば取り付けられるため、野菜から果樹まで幅広い植物に対応可能だ。これまで、植物の樹液を測定するデバイスは主に研究用途で高額であったが、プリンテッドエレクトロニクス技術を活用することでデバイスの価格を大幅に下げることに成功した。すでに国内外のワイナリーや、米国カルフォルニア州のピスタチオ園などで導入されているとのことだ。

樹液流量センサ「Sap Flow Sensor」

システム構成例

大規模な照明制御をシンプルなシステムで実現

大阪府大阪市に本社を置くジーワンは、2.4GHz帯を用いた微小電波でリレー通信を行い、多数の照明デバイスを制御するシステム「Ripple System」を出展。同システムは設置が容易で、屋外や大きな会場でもコンパクトな設備で対応できるほか、自動ポジショニング機能により、人が自由に動き回る会場でもさまざまな演出をコントロールできることが特徴。例えば、光が波紋のように動く演出や、次第に色を変える効果などを簡単な操作で自在にコントロールでき、大型イベントでの採用実績がある。現在、同システムで培った技術を医療分野へ転用する検討を進めているとのことだ。

多数の照明デバイスをアンテナ1つでコントロールできる

IoT時代に適したカメラ

警備や介護用途などで利用されるモニタリングシステムでは、カメラの数だけ画面が分割されるため、モニターし辛いという課題がある。こうした問題を解消するのが、SEtechのBig Data取得カメラだ。同カメラはセンサ・カメラ内部で特定領域の動きの判定を行い、動きがなければ画像を出さず、後段システムに対してOFF信号を出す。また、特定領域で動きがあった場合に動きベクトルや画像を表示、後段処理回路を省略する。これにより、動きを検知したカメラ画像のみが表示されるため、見る側および見られる側のストレスを低減する。また、後段処理の負担を軽減できることから、IoTにおけるビッグデータ取得カメラとしても適しているとする。

非常にコンパクトなBig Data取得カメラ

不審な動きをAIで判別する新しい防犯カメラ

アースアイズは人間の5感に近いセンシング機能と、予知・予測を可能とする人工知能を搭載した防犯システム「AI-ロボカメラ」を出展。同システムはカメラに搭載された3D検知機能、音源探知機能などにより不審な動きや音を検知・判別し、スマートフォンに通知する。家庭の防犯や見守りのほか、店舗や施設での万引き検出に活用できるという。施設や店舗など法人利用では現地調査などが必要となるが、家庭で使う場合はPCでの簡単なセットアップで利用可能になるなど、導入の容易さも特徴。第2世代製品では臭気センサも搭載される予定だ。

販売スケージュールについては、まず予約分を2017年1月に発売し、同年3月より量産を開始する。予定価格(税別)はカメラ本体が8万5000円~で、このほか月額料金が法人の場合は3000円/台かかる。なお、個人で購入した場合の月額料金については1000円/台未満となる見込みだ。

「AI-ロボカメラ」のカメラ本体

3D検知機能により高精度で距離を測定する