さまざまな産業や企業がIoTに興味を示しているが、その多くがこれまで半導体を取り扱ったことがなく、所望するデータを得るためのセンサの活用方法から、果てはどういったデバイスやセンサを選定すればよいのか、といったところまでノウハウが不足しており、対応に苦慮する、といった課題がIoTが普及する障壁となっている。半導体大手の日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)でも、そうしたニーズを把握しており、そうした課題を抱えるカスタマに最適なセンサを適宜提供していくことを目指した取り組みを進めているという。
例えばネットワークの接続方法1つとってみても、有線と無線の2方式が考えられ、無線のほうが一見スマートややり方に見えるが、「有線で接続しても問題のないような場合、低コスト化や通信の信頼性向上といったメリットを得られる場合もあり、そうした利用条件に応じた最適な知識の提供なども含めた取り組みも行っている」と同社営業・技術本部 IoTソリューションズの酒井正充氏は語る。
良くある話が、IoTの活用=ワイヤレスでセンサ同士を接続して、データをゲートウェイに吸い上げる、というものだが、実は有線でも良い場合が多々あり、低コスト化などを図ることが可能だという。右はTIのデジタル温度センサ「TMP107」を用いたデイジーチェーンの評価キット。先端のUSBドングルをPCなどを接続し、3m程度の距離間隔でセンサを最大32個まで接続していくことが可能 |
実は同社、National Semiconductor(NS)を買収した経緯もあり、データの吸い上げを行うセンサ製品もおよそ450品種とかなりの数をそろえており、温度センサ、誘導型近接センサなどさまざまな種類のセンサを提供している。プロジェクタで活用されているDLPもそうしたMEMS技術を活用したデバイスの1つとなる。
同社は近年、そうしたセンシング技術として、「Inductive sensing」と「Capacitive sensing」と呼ぶ2つの技術の開発を強化しており、「タッチセンシング」、「スイッチセンシング」、「近接センシング」の分野で特徴あるソリューションの展開を進めているとする。
また、IoT機器の活用を進めるための低消費電力マイコン「MSP430」もFRAM搭載品を提供することで、さらなる低消費電力化を実現したほか、静電容量タッチ技術「CapTIvate」を搭載したマイコンも用意。さらには周波数成分の解析が可能なハードウェアFFTであるデジタル信号処理エンジン(LEA)を搭載することで、競合のCortex-M0+マイコン比で35倍の演算高速化、10倍の低消費電力化が可能になったとしている。
IoTの普及に向け、センサやマイコンの製品ラインアップ強化を進める同社が今、一番注力しているのはさまざまな規格が乱立しつつあるIoT向け通信技術への対応だという。例えばSub-1GHz対応マイコン「CC1310」は11月14日付けで、評価モジュールがSigfox日本仕様に対応したことが発表されている。また、手軽にさまざまなセンサの評価を可能とするセンサタグの提供も強化しており、9月には1チップでSub-1GHzとBLEをデュアル駆動可能な無線マイコンSimpleLink「CC1350」を搭載したセンサタグを提供している。ちなみに、活用可能なセンサとしては、「照度」「マイク」「磁気」「気温」「湿度」「気圧」「IR温度」「加速度」「ジャイロ」「コンパス」の10種類となっている。
このほか、クラウド連携での活用がIoTでは必須のため、国内外のSIerなどとパートナーシップを締結。日本でも5月に富士通とパートナーシップを締結したことを皮切りに、ユビキタスなどともパートナーシップを締結。現在、国内外で45のパートナーが、同社の半導体チップ上にエージェントを搭載し、クラウドに接続できることを確認しているという。
なお、国内におけるパートナーシップは現在も継続して数を増やすことを目的とした取り組みを進めているとのことで、2017年にはさらに数が増加する見込みだという。