ティントリジャパンは11月4日、都内で記者会見を開き、仮想化専用フラッシュストレージ「Tintri VMstore」に追加された新機能を発表した。今回、新たに複数の筐体でリアルタイムにデータを複製し"ゼロRPO"を実現する「Synchronous Replication」機能と、複数サイトにデータを複製し災害対策を実現する「1-to-many Replication」機能を追加。また、ビッグデータを活用した分析/予測のクラウドサービス「Tintri Analytics」の提供も開始した。

ティントリジャパン 技術担当副社長の首藤憲治氏

冒頭、ティントリジャパン 技術担当副社長の首藤憲治氏は「クラウド基盤を支えるストレージへのニーズが高まっており、プライベートクラウドでもパブリッククラウドと同等のストレージが求められるようになった。実際、ティントリでは販売金額の40%がクウラドプロバイダーが占めるなど、急激に伸びている。6月のオールフラッシュのラインアップ刷新がクラウド対応に向けた取り組みの第1弾だとすると、今回の新機能提供は第2弾となる」と位置づけを説明した。

首藤氏によると、クラウド基盤のストレージに求められる要件は「自律型データセンター」「アナリティクス」「自動化」「拡張性と管理性」「堅牢性」の5項目に大きく分けられるという。このうち、自動化や拡張性と管理性の項目については、複数の筐体を組み合わせて16万VMまで拡張できる「ScaleOut」などの新機能を6月に発表している。

今回、対応するのは堅牢性とアナリティクスの項目となる。まず、堅牢性についてはデータ保護機能となるSynchronous Replicationと1-to-many Replicationの2つの新機能を追加。一方、アナリティクスについては顧客からの収集データを活用して、将来の性能や容量の予測を行うクラウドサービスとしてTintri Analyticsで対応する。

具体的な機能は、ティントリジャパン SEマネージャーの八木下洋平氏と同SEマネージャーの東一欣氏が解説した。まず、Synchronous Replicationはリアルタイムでのデータレプリケーションを行う機能だ。同社はデータの複製機能として、これまで「SnapVM」と「ReplicateVM」の2つを提供してきた。

SnapVMは、VM単位でスナップショットをとることができる機能で、取得したスナップショットはReplicateVMを使って、1分間隔で別のVMstroreにデータの転送を可能とし、重複排除と圧縮を使ってWAN回線でも効率的に転送できるのが特徴だ。ただ、セカンダリーサイトからリカバリ処理を行う場合、vSphere ESXiなどの上から起動を行う必要があり、透過的なアクティブ-スタンバイの切り替えができないことが課題だったという。

ティントリジャパン SEマネージャーの八木下洋平氏

「Synchronous Replicationを使うと、セカンダリサイトからの切り替えを透過的に行うことができるようになる。構成としては、ESXi上で仮想IPとして別のVMStoreをマウントしておくだけ。有事の際には、仮想IPをプライマリからセカンダリに引き継いでIOを継続させる」(八木下氏)

八木下氏は、仮想マシン上でファイルのコピーや動画再生を行っている際、プライマリのVMstoreからセカンダリのVMstoreに強制的に切り替えても、コピーや動画再生が途切れることなく動作していることをデモで示した。VM単位でポリシーを設定することができ、プライマリとセカンダリーの双方向でデータをミラーリングすることも可能だという。

Synchronous Replicationは、最新のOS 4.3と管理ソフトTintri Global Center(TGC) 3.5から対応する。ライセンスはReplicateVMのライセンスで利用でき、追加購入する必要はない。なお、ローカルとDRサイトとの距離は100Km圏内、10GbEのネットワーク帯域を推奨している。

また、データ保護機能である1-to-many Replicationは、これまでの1:1やN:1に加えて、1:Nでのレプリケーションを可能にする機能だ。従来は1:Nでのレプリケーションができなかったため、ローカルのデータを複数サイトにバックアップにしようとする場合、バックアップソフトを利用したり、バックアップデータを二重に管理する必要があったという。同機能を利用すると、VMstoreだけで複数の転送先にデータを転送するとともに、バックアップ管理が可能になる。転送先は最大4 VMstoreまで指定を可能とし、管理にはTGC 3.5が必要だ。

「Synchronous Replication」の概要

「1-to-many Replication」の概要

一方、Tintri Analyticsは顧客環境が将来どのように推移するかを分析/予測し、性能設計や投資計画を立てやすくするSaaSサービス。ティントリでは製品発売当初から、Auto Support機能と呼ばれるVMstoreから収集される診断データを使い、故障検知などのプロアクティブなサポートに役立てている。

ティントリジャパン SEマネージャーの東一欣氏

「Tintri Analyticsは、過去6年間で2000システム超から収集されたビッグデータを使い、性能や容量の予測、シミュレーション機能を提供する。最長18カ月先まで予測でき、過去36カ月のデータをさかのぼり、参照できる。分析/予測する項目は、管理者がグループとして設定する。グループは、ハイパーバイザー環境ごと、データベースごと、特定のアプリケーションごとといったように自由に設定が可能だ」(東氏)

顧客は、サービスサイトで自身のVMstore上の性能や容量が現在どのような状況にあり、今後どのように推移していくかをグラフィカルに把握できる。性能が劣化しやすい時期を予測しQoSを調整したり、容量の増加ペースを把握することで、どのタイミングで筐体を追加すればいいかを判断したりといったことが可能になる。また、そうした判断の際には、シミュレーション機能を使い、期待するIO Performanceの値を変更し、容量や性能がどうなるかを把握することもできる。

「Tintri Analytics」の概要

「Tintri Analytics」の特徴

Tintri Analyticsは英語版での提供となり、利用は無償。vSphere、Hyper-V、RHEV、Xen Server、OpenStackのマルチハイパーバイザーに対応する。