独立系半導体ナノエレクトロニクス研究機関であるimecとその姉妹研究機関「Holst Centre」は、センサネットワークの長距離接続に向けた低消費電力広域(low-power wide-area:LPWA)マルチスタンダード無線チップを、5月24~25日にブリュッセルで開催されたimecの業績報告・計画発表会にて発表した(図1)。同無線チップは、センサネットワーク用途においてトップクラスの低消費電力を実現したという。

imecなどが開発した低消費電力広域LPWA無線チップ

多数のプロトコルや将来のセルラーIoTにも対応

sub-GHz無線チップ技術は、普及しているLoRa and SIGFOXネットワークに加えて IEEE 802.15.4g/k、W-MBUS、KNX-RFなど多数のプロトコルに対応している。スマートメータ、スマートホーム、スマートシティ、やインフラ監視などのための、将来のセルラーIoTにも対応している。

この無線チップは、産業、科学、医学(Industrial Scientific Medical:ISM)および短距離デバイス(Short-Range Devices:SRD、日本では小電力無線電話と呼ばれる)帯域で活用され、780MHzから930MHzまでをカバーする。

市販の無線チップに比べて、外付け部品点数を最小限にして材料費を抑えているほか、RFフロントエンド、電源管理、ARMプロセッサ、160KBのSRAM、そしてSPI、12C、UARTなどの周辺回路を、1つのSoCに集積している。目標感度は0.1% BER(1kbps)で-120dBm、消費電力は13.5dBm出力時に8mW(Rx)および113mW(Tx)と低い。105dBという広いダイナミックレンジに対応して、-120dBmから-15dBmに至る入力信号を扱うために広い利得範囲をサポートしている。さらに出力は、-40dBm未満から15dBmまで可変可能である。

図2 imec/HolstのプログラムディレクタであるKathleen Philips氏

「3GPP(Third Generation Partnership Project:国際的な標準化プロジェクト)は2016年6月にNB-IoTプロトコルをリリースする予定だが、NB-IoT、SigFox、LoRAなどのプロトコルが今後数年に渡り使われるのは明らかである」とするほか、「私たちのsub-GHz無線チップはこれら複数のプロトコルに対応し、IoTの長距離無線接続に理想的である」とimec/Holst CentreのプログラムディレクタであるKathleen Philips氏(図2)は話している。

次は直感的IoT向けセンサネットワークとの組み合わせを検討

imecは「直感的IoT(Intuitive Internet of Things)」という造語を作り出し、それに関する産業提携プログラムを展開、将来のためのビルディング・ブロックの開発に焦点を当てている。そして、プログラムは独自の直感的IoTを追及していく。つまり、人々が意識しない控えめな方法で人々が必要としたり望んでいることを検出し、望みをかなえるようにそっと援助し、それぞれの人の多様な嗜好や周囲の環境も認知できるセンサシステムを用いることで実現しようという取り組みだ。

このためimecでは、超低消費電力無線チップとともに、超小型・低コスト・インテリジェントな、超低消費電力センサとそれらを組み合わせたセンサ・ネットワークも積極的に開発を進めており、今後、興味がある企業にはライセンスを行っていくとしている。