3月は日本市場が世界全地域で最高の伸び

米国半導体工業会(Semiconductor Industry Association:SIA)は5月2日(米国時間)、2016年3月の世界半導体売上高統計を発表した。それによると、日本における半導体販売高が1年7カ月ぶりに前年同月比でプラスに転じ、1.8%の増加となった。2位は中国の1.3%増で、ほかの3地域(米州、欧州、日本・中国を除くアジア・太平洋・その他地域)はすべてマイナス成長であった。

日本市場は前3カ月(移動平均値)比でも他の地域がマイナス成長となる中、0.8%の増加となった。日本市場に関するいずれの数字も世界5地域(米州、欧州、日本、中国、アジア・太平洋・その他)のなかで最高の伸びを示した。また米国は、前年同月比、前3カ月比ともマイナス15%と大きく落ち込んだ。

2016年3月の世界5地域(米州、欧州、日本、中国、アジア・太平洋・その他地域)別の半導体売上高統計(単位は百万ドル)。上段:前月との比較、左から2016年2月売上高、2016年3月売上高、前月比増減(%)。中段:前年同月との比較、左から2015年3月売上高、2016年3月売上高、対前年同期比増減(%)。下段:前3カ月移動平均との比較、左から2015年10月、11月、12月の移動平均売上高、2016年1月、2月、3月の移動平均売上高、対前3カ月移動平均比増減(%) (出所:SIA)

3月の世界半導体売上高は5カ月ぶりにプラス成長

SIAによると、2016年3月における世界半導体市場での総売上額は260億900万ドルだった(3カ月移動平均値、以下同じ)。前月比0.3%増とわずかに増えたものの、前年同月比では5.8%の減少となった。前月比で増加したのは5カ月ぶりながら、前年同月比での減少は9カ月連続となっている。

青線は世界半導体市場における月別総売上高(単位:10億ドル)の過去20年間の推移。赤線は世界半導体市場における月別総売上高の前年同月比増減(%) (出所:SIA)

SIAは2016年第1四半期の世界半導体売上高についても、3月度の統計と同時に発表しており、売上高の総計は783億ドルで、前年同期比5.8%減となった。WSTS(世界半導体市場統計)が2015年12月に発表した2015年の秋季半導体市場予測では2016年の世界半導体市場は前年比1.4%増としていたが、おそらく2016年春季予測の際に下方修正せざるをえなくなるであろう。スマートフォン、PC、モバイル製品の減産の影響で、調査会社であるGartnerは、2016年の半導体市場は、0.6%のマイナス成長を予測している

これらの発表に際して、SIA会長兼CEOのJohn Neuffer氏は「世界半導体売上高は5カ月ぶりに増加したが、半導体需要の軟化、市場の季節変動、マクロ経済状態などの影響で、半導体市場は大きく成長できない状態にある。特に米国の2桁におよぶ落ち込みが目立つ」と述べたほか、「SIA会員企業の売り上げの83%は海外に依存している。この点で米国半導体企業が海外市場へ積極的にアクセスすることは業界が長期的に強みを発揮するために不可欠である。この点で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、アジア太平洋地域の国々との貿易をする際の無数の障壁を破壊しようとする画期的な貿易協定であり、半導体業界、ハイテク産業、米国経済、そして世界経済のために好ましい」とコメントを付け加えている。

半導体企業が国内に留まるのはリスク

またSIAは5月6日(米国時間)、「BEYOND BORDERS(国境を超える - グローバルな半導体バリューチェーン)」と題するレポートを発行し、その中で、グローバルな半導体バリューチェーンの重要性を強調し、「(米国企業が)国境を越えて他国の企業と相互に結びつくことこそ革新や成長を生みだす」と述べているほか、1つの国の中にバリューチェーン全体を実現しようとした場合のリスクをあげて警告している。

SIAが発行した「BEYOND BORDERS」の表紙 (出所:SIA)

なお、同レポートは、先進エレクトロニクスのビルディングブロックを作成するために、グローバルなバリューチェーンが、世界中の半導体研究者、デザイナー、メーカー、アセンブラ、およびサプライヤを一体化させ、研究開発、設計、効率的な低コスト製造、試験、組み立ておよびパッケージング、さらには流通・販売をグローバルな観点から取り組む手法について解説しているもので、John Neuffer会長は、「半導体チップ内部の複雑な回路と同様に、グローバルな半導体バリューチェーンは効率的かつ生産的で、常に進化を続ける複雑な相互依存のネットワークである。このような国際的なエコシステムは、雇用と輸出の機会を増加させ、参加国に恩恵をもたらす」と発行について説明を行っている。