2016年も4月に入り、米国のハイテク市場調査会社であるIHS TechnologyとGartnerが、それぞれ独自の調査に基づいて、2015年(暦年)の世界半導体市場および半導体企業売上高の最終確定値を相次いで発表した。また、米国の半導体市場調査専門企業IC Insightsは毎年恒例の世界半導体市場における国別シェアを発表。いずれの結果からも日本が存在感を失いつつある現状が垣間見える。

2015年の世界半導体市場は2%縮小、今後さらに縮小か?

IHSによると、2015年の世界半導体市場(売上高総額)は3473億ドル(約38兆2000億円。1ドル110円換算)で、2014年の3543億ドルから2.0%減少した。4半期ごとの成長率は、1年を通して弱含みで、とくに第1四半期は前期比8.9%減となり、これはリーマンショックの余波で2009年第1四半期が前期比で大きく落ち込んで以来の落ち込みであった。世界の半導体市場は2013年には6.4%増、2014年には8.3%増と好調に成長してきたが、2015年はついに息切れしてしまった。

「このような成長息切れという結果は、今後3年にわたる半導体不況が始まる兆しかもしれない」とIHS Technologyの副社長兼チーフアナリストのDale Ford氏は語る。また同氏は「ワイヤレス通信、データ処理、コンシューマ・エレクトロニクスなどの主要分野のエンド製品マーケットの需要が低調で、この間の半導体の成長の足を引っ張りそうだ」とも語っている。

IHSの最新の情報によると、今後2015年~2020年の間の世界半導体市場の年平均成長率は、およそ2.1%にとどまると予測されているが、現在の技術、経済、市場および製品の動向から、2020年~2022年ごろに画期的な新製品が現れると思われ、これが半導体売上高の急成長をもたらすとも予測されている。

表1 世界半導体市場売上高ランキング・トップ25 (単位:10億ドル)。表の左から2014年順位、2015年順位、企業名、2014年売上高、2015年売上高、2015年の前年比成長率、市場占有率、市場占有率の累計(1位からその順位までの市場占有率の合計) (出所:IHS)

企業買収で売上高増加し順位が上昇

「2015年は記録的なM&Aが頻発した年だった」とFord氏は振り返る。米Intelは米Alteraを買収することで、プロセッサの売上減少を埋め合わせて2.9%の成長を遂げ、シェアを伸ばし、長年にわたる トップの地位を守った(表1参照)。また、2位の韓国Samsung Electronicsは売上高を前年比8.3%増と大きく伸ばし、トップIntelとの差を112億ドル余りに縮めた。3位は、DRAM特需で4位から順位を1つ上げた韓国SK Hynixであった。米Qualcommは売上高を14.5%減少させ、3位から4位に後退した。同社はCSRを買収したが、それくらいではワイヤレス市場の売上減を補えなかったようだ。トップ10の中で最後のM&Aは蘭NXP Semiconductorsによる米Freescale Semiconductorの買収だが、これにより、NXPは2014年の15位から、東芝はじめ7社を追い抜き一気に7位に駆け上がった。

トップ20社に目を向けると、Infineon TechnologiesはInternational Rectifierの買収で順位を1つ上げ、12位となった。また11位のAvago Technologiesが2016年上半期中に同9位のBroadcomの買収を完了すれば、5位に躍り出ることが見込まれるほか、20位のON Semiconductorが半導体の老舗である米Fairchild Semiconductorの買収を完了すれば順位が2つ上がる見込みである。

ちなみにトップ20社中14社が売り上げを増加させている。これは、調査対象285社の中で売り上げを増加させたのが42%であることを考えると、対照的だ。なお、売上高ランキング・トップ25(表1)の中に日本企業は、東芝(8位)、ルネサス エレクトロニクス(15位)、ソニー(16位)、ローム(25位)の4社が含まれるが、このうちプラス成長を果たしたのはソニーだけであった。