新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などは4月22日、NEDOプロジェクトにおいてアルハイテックがアルミ系複合材廃棄物から水素を発生させる検証プラントを完成させ、稼働を開始したと発表した。同検証プラントにおける水素発生量は、今後最大で1時間当たり約5kg(燃料電池車走行距離約700kmの充填量に相当)への拡大を予定している。

完成した検証プラント

アルハイテックは、リサイクルが困難といわれていたアルミ系廃棄物からアルミを分離し、水素を発生させ、発電に利用する画期的なシステムを開発。2014年12月からNEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、アルミ系廃棄物再生プラントの実用化に向けての開発に取り組んできた。

同プロジェクトにおいて同社は朝日印刷の協力を得て、朝日印刷の富山工場内に検証プラントを整備。検証プラントは、パルパー型分離機、乾留炉、水素発生装置で構成し、これまでに工場から排出されるアルミ系端材などを使用した動作確認を実施しており、1時間あたり2kgの水素を発生させることに成功しているという。

今後、水素発生量は最大で1時間当たり約5kg(燃料電池車走行距離約700kmの充填量に相当)への拡大を予定しているほか、処理の過程で取り出されるパルプ、油、水酸化アルミについても有効利用と経済性について検証を行うとともに、そのほかの技術的課題解決や省エネルギーの検証についても、引き続き実施していく。

同技術は廃棄物の削減を可能にするだけでなく、エネルギーと水素を生み出し、有効利用可能な水酸化アルミなどの副産物が得られるなど、装置の稼働により企業の収益性向上にも寄与することが期待できることから、これらの取り組みを通じて国内外を問わず導入顧客となり得る印刷工場、パッケージ工場、金属工場などに対し、立案しビジネス展開を目指すという。

検証プラントの全体システム

検証プラントは、アルミ付紙パックなど紙・アルミ・プラスチックの複合材廃棄物からパルパー型分離機でパルプ成分を取り出し、残ったアルミ付プラスチックを乾留炉で加熱することでガス・オイルと高純度のアルミに分離し、さらに分離回収したアルミを水素発生装置で特殊アルカリ溶液と反応させ、発生させた水素を発電などに有効利用するというもの。

乾留炉では、エネルギー効率を向上させるために電気式であった加熱方法を乾留により発生させたガスを燃焼させることで得られる熱を利用する熱風式とし、熱風発生炉で乾留ガスが助燃バーナーに頼ることなく自燃しロータリーキルンの加熱に利用することに成功。目標としていた1時間あたり90kgのアルミ・プラの処理量を達成したという。

また、水素発生装置では、既存の水素発生装置では反応槽にアルミの追加投入が不可能だったが、材料形状とフィーダーを工夫することで可能とし、連続的に水素を発生させることができる。将来的には水素利用社会に向けて水素ステーションでの利用も検討していく予定だ。