フィリップスが切り拓く、男性向け美容家電

化粧品だけでなく、男性向け美容家電も実は存在する。そのひとつが、フィリップス エレクトロニクス ジャパンが2015年2月に発売した電動洗顔ブラシ「メンズビザピュア MS5075/17」。女性向けに販売している洗顔ブラシ「ビザピュア」シリーズの男性向けモデルだ。マットなブラックで、なんとも"都会派"な見た目をしている。

メンズビザピュアは現在、韓国と日本、フランスで販売されている。日本では「男の五大肌悩みへ。」という売り文句で展開。「テカリ」や「毛穴の黒ズミ」といったピンポイントの悩みではなく、肌の悩みに幅広く対応できるイメージが受けているよう

メンズビザピュアの発売から1年ちょっと。「売上は堅調に推移しており、これまでにない新カテゴリの製品ながら立ち上がりは非常に好調です」と答えてくれたのは、フィリップス エレクトロニクス ジャパンのマーケティング メンズグルーミング マネージャー 藤井崇雅氏だ。

男性向け理美容家電というと真っ先にシェーバーが思い浮かぶが、メンズビザピュアはスキンケアの基本ともいえる洗顔専用の家電。「世界的にみてシェーバーは縮小している市場です。そのため、新しいエリアを開拓したいという思いもあって、スキンケアを新たな柱に据えています。男性の美容意識が高い韓国ではメイクアップ製品のニーズがありますが、日本ではそうでもない。しかし、洗顔ならばより幅広い地域で使ってもらえるのではとメンズビザピュアが誕生しました」(藤井氏)。

フィリップス エレクトロニクス ジャパンのマーケティング メンズグルーミング マネージャー 藤井崇雅氏

ちなみに、メンズスキンケア市場はアジア、特に韓国が市場をリード。フィリップスの調査では、メンズスキンケア市場は2014年に2,800億円規模、2020年までにはその倍以上となる5,600億円に拡大すると予測されている。

メンズビザピュアでは、スキンケアに関心がありそうな、20~35歳くらいの都市部に住む男性に狙いを定めた。主にWebでの広告に集中。バナー広告のクリエイティブなどは週単位で検証し、効果の高いものへ順次変更してきた。スピーディーに対応することで「こちらが届けたいと思っている人にきちんと届いたんだと思います。メンズビザピュアという製品と広告の出し方がうまくかみ合ったおかげで好調な滑り出しとなりました」と藤井氏は振り返る。

藤井氏はメンズビザピュアを「かなり期待の持てる製品」という。確かに、フィリップスがこれまで手がけてきた新カテゴリの製品とは一線を画する存在だ。たとえば、体毛を整えるためのボディグルーミング製品も男性向けとしては新カテゴリだったが、藤井氏いわく「製品が先に行き過ぎていて、ニーズが追いついていない状況」だったらしい。日本でボディグルーミングというジャンルが定着するまでに数年を要したというが、メンズビザピュアについては「ちょうど今のニーズに合っている」とのこと。フィリップスとしても本気で取り組んでいきたい市場だ。そのため、男性が求めている機能を提供できるよう、新製品についても「鋭意検討中」と積極的な姿勢をみせる。

ターゲットをピンポイントで定めていたため、発売当初は販路をオンラインに絞っていたが、2016年2月後半から3月にかけて店頭でも販売を開始。家電量販店などでも購入できるようになった。藤井氏は「現在は洗顔ブラシを広げていくフェーズ。いきなり巨大な市場を築き上げるというよりは、ゆっくりきちんと丁寧に広めていきたい」と語る。

メンズスキンケア市場の見通しは明るいのか

メンズスキンケア市場が拡大しつつあるというのは間違いなさそうだ。さらに普及していくカギは「購入のハードルをいかに下げるか」にあると思われる。それを解決するには、「男性用」と銘打つことも重要だが、スキンケアについて積極的に啓蒙していくのが結局は近道になるのではないだろうか。

テカりやすく乾燥しやすいのに、日々のシェービングでさらなるダメージを与えられる男性の肌。きちんとケアしている人が少なければ少ないほど潜在ニーズは大きい。メンズスキンケア市場は、まだまだこれからといったところだが、成長の兆しは十分に感じられる。