情報通信研究機構(NICT)は3月30日、広域無線システムとWi-SUNによる狭域無線システムの融合実験に成功したと発表した。
同研究では、国際標準IEEE Std. 802.22b (物理層運用モード2)規格に準拠した「基地局装置」および「加入者局装置」を開発。同装置を使用し、24.1km離れた2地点間において、上り回線9.7Mbps (加入者局側: 指向性アンテナ)および上り回線4.8Mbps (加入者局側: 無指向性アンテナ)のデータ伝送速度を達成した。この広域無線回線の加入者局側に接続されたWi-SUNルータを介して収集された複数の加速度センサのデータをまとめて、基地局側に常時伝送するとともに、加速度センサの値の変化に応じて、加入者局側で撮られた高精細映像を基地局側へ自動的に伝送開始する実証試験に成功した。
こうしたシステムは地震が発生した際に、揺れが発生した地点の映像を自動的に遠距離の地点に伝送することで、現場状況の把握に役立てることができると考えられている。同研究では、広域無線システムの装置4台を使用し、2つの伝送区間で同一チャンネル(帯域: 4.6MHz)を用いた中継伝送を行い、総距離30km以上離れた2地点間において、2.9Mbps(上り/下り回線とも)のブロードバンド無線伝送にも成功しており、中継機能により、新たな周波数帯を使用することなく、伝送距離を伸ばすことが可能になるとしている。
研究グループは今後、Wi-SUNによる狭域無線システムとWRANによる広域無線システムとの融合を進めるほか、開発した広域地域無線装置については、利用可能な周波数帯情報を有するデータベースに接続する機能や周波数チャンネルを複数まとめて利用するチャネルアグリゲーション機能の追加、対応周波数帯の拡張などを行うことで、より汎用性のあるブロードバンド無線通信システムにしていく予定だとしている。