日本政府は2020年までに、「テレワーク導入企業を2012年度比で3倍」、「週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上」といった高い目標を掲げており、昨今「テレワーク」に対して非常に注目が集まっている。
「テレワーク」というと、これまで「在宅勤務」の意味合いが強かったが、最近ではさまざま広がりを見せている。今回はSkypeを利用してビジネスを創出しているという北海道札幌市に拠点を置くラジカルブリッジの斎藤栄氏を取材した。取材はもちろん、Skypeで。
業務アプリ構築を定額プランで提供
ラジカルブリッジは、 ITアドバイス事業/クラウドソリューション事業/受託開発事業/開発サポート事業などを手がける企業。2012年に同社を設立した代表の斎藤氏は、2013年から“クラウドおじさん”としてクラウドの導入支援・啓蒙活動を始め、2014年からはサイボウズ公認の「kintoneエバンジェリスト」として活動している。
そんな同社が提供しているのが、Webデータベース型のビジネスアプリケーションをノンプログラミングで自由に設計できるサイボウズのクラウドサービス「kintone」をベースにした、短期間かつ低コストで業務アプリ構築が可能な訪問型のサービス「ベストチーム365」だ。「わくわくプラン」と「にこにこプラン」の2種類が用意されており、いずれも初回訪問および試作は無料。前者が訪問改修1回で8万9890円(税別)、後者が訪問改修3回+60日間の利用サポート付きで25万2500円(税別)と、システム開発ではめずらしい定額プランでの提供となっている。
斎藤氏は「業務アプリ構築では、お客さまの要件をヒアリングしてから詳細な見積を出す、というのが一般的です。弊社も従来はこの方式を採用していましたが、相場が分からないお客さまにとっては不安でしょう。またこちらとしても、見積に時間が費やされてしまうことが課題でした。しかし、kintoneを使うと構築スピードが大幅に短縮できるため、逆に見積で悩んでいる時間がもったいないと感じ、思い切って見積なしのシンプルな料金体系にしてみました」と語る。
遠隔地の業務アプリ構築にも柔軟に対応
この「ベストチーム365」は、顧客企業へ訪問してから業務アプリを構築するのが基本となっているが、遠隔地の顧客に対してはSkypeなどのネットミーティングを通じたテレワーク方式での構築を行っているという。その一例として、佐賀県医療センター好生館向けに構築した診療予約管理アプリの開発がある。
好生館は、佐賀県で「地域医療支援病院」の認定を受けている医療センターだ。同院では2014年より、地域の連携医療機関からの紹介患者を対象に、時間指定で診療予約を受け付けるサービスをスタートした。しかし、地域医療機関からの電話予約はシステム化されておらず、電話を受けたスタッフが空き時間を確認して紙の台帳に記入していた。さらに、この台帳を基に、別途「来院予定者リスト」「月別予約実績」などをExcelで作成しなければならない状況だった。これでは電話対応が台帳の置いてある場所でしか行えないほか、予約の確認・記入やExcelへの入力などスタッフの業務負荷が増加していたのである。
問い合わせを受けたラジカルブリッジは、早速Skypeでのミーティングを実施。実際の業務フローを口頭で説明してもらうと同時に、紙の台帳とExcelのデータを受け取って、ミーティング中に業務アプリの大枠となる部分を構築していった。
1回目のミーティングが終了した後、斎藤氏は現場の業務フローに即して詳細な作り込みを実施。2回目のミーティング時に手直しを行い、現在の診療予約管理アプリを完成させた。実作業がわずか3日程度というから驚きだ。この診療予約管理アプリにより、好生館では予約オペレーションに関する業務効率が大幅に向上。地域医療機関との連携も、より一層スムーズなものとなっているという。
新たなビジネススタイルの確立
システム開発はどうしても「莫大なお金がかかる」というイメージが先行しがちだ。特に中小企業では、予算的な問題から汎用システムに頼らざるを得ない、アナログな手法に依存している、といった状況も多く見られる。しかし、システムに業務を合わせていたのでは効率が悪く、スタッフにかかる業務負担も大きくなるだろう。アナログな手法であれば、なおさら作業時間や負担が増大する。そんな時、ラジカルブリッジが提供する「ベストチーム365」のようなサービスがあれば、低コストかつ短期間で現状に即したシステムの構築が可能だ。加えて、距離や時間に縛られずに依頼できる点は魅力的といえる。
このように、遠隔地にも対応する業務アプリ構築サービスで、新たな需要創出を図っているラジカルブリッジ。同社では今後、kintone向けの有償プラグインや、各種クラウドサービスと連携して使えるオールクラウドサービスの開発なども予定しているという。
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これからは会社の中での働き方だけでなく、顧客とのビジネスの仕方についてもテレワークを考えてみてはどうだろうか?新たなビジネスを生みだす、チャンスとなるかもしれない。