1987年に創業したポピンズは、4つの事業を柱とする企業だ。ベビーシッターを派遣するチャイルドケアサービス事業、高齢者向けに介護・在宅ケアを行うシルバーケアサービス事業、保育所・学童施設を運営するナーサリー事業、ポピンズ国際乳幼児教育研究所を中心に社内外向けの研修やセミナーを実施する教育サービス事業を提供している。この中でもチャイルドケアサービスは、「ナニー」と呼ばれる約2000名の優秀なベビーシッターが在籍。深夜でもつながる24時間365日受付対応に加え、当日の朝でも予約できる利便性や、28年間で大きな事故が1件も発生していない信頼性などにより、日本国内で約3500名もの個人会員数を誇っている。

ポピンズ 常務執行役員の井上正明氏

ポピンズ 常務執行役員の井上正明氏は、ナニーサービスについて「近年は個人会員さまだけでなく、企業や官公庁が福利厚生の一環として社員向けに提供する法人契約の需要が急激に伸びています」と語る。

需要拡大の背景としては、2013年に厚生労働省が発表した「待機児童解消加速化プラン」の存在が挙げられる。同プランは、保育所や学童保育施設へ申し込みを希望しているにもかかわらず、定員数に達しているため入所できない「待機児童」の解消を図るというもの。平成29年度末までに約40万人分の保育の受け皿を確保するべく、国としての支援を実施している。

「企業や官公庁が事業所内保育所を作るには、多大な初期投資が必要です。その点、自宅派遣型のナニーサービスをご利用いただければランニングコストだけで済みますから、企業の規模を問わずご利用いただけます」と、井上氏は法人契約のメリットを語る。

需要増加に対応できる新システムの構築が急務に

しかし、こうした需要増加に対応する上で、同社はシステム面の課題を抱えていた。2007年に構築した従来のシステムは、顧客の増加に伴い、取り扱うデータ量が大幅に増え、処理スピードの低下を招いていたのである。

ナニーサービスでは当時、会員からの派遣依頼をオペレーターが電話で受け、会員情報と時間帯から最適なナニーをマッチングする業務プロセスを基本としていた。だが、システムの処理スピードが遅くマッチングに時間がかかるため、オペレーターは会員からの電話を一度切ってシステムに入力。マッチングの結果が出てから会員へ電話連絡を入れる、という流れを余儀なくされていたという。

ポピンズ チャイルドケアサービス部マネージャーの菅原櫻子氏

ポピンズ チャイルドケアサービス部マネージャーの菅原櫻子氏は「従来の方式ではオペレーターの対応に手間と時間がかかることに加え、お客さまをお待たせてしまうのが難点でした」と、当時の状況を思い出しながら語る。

そこで同社は2014年に、大規模な業務改革を含むシステムの刷新について検討を開始した。これはオペレーターの電話対応業務を改善するだけでなく、“One Poppins”をキーワードに4つの部門が不完全な形で保有していた会員データを可能な限り統合し、見える化と業務効率化の実現を目指すというものだ。

菅原氏は「従来は紙の申し込み書類ベースで会員登録を行っており、訪問した担当者への手渡し、もしくは郵送で弊社へお送りいただいていました。この書類は、緊急避難場所の地図やお子さまのアレルギー情報なども含めて、ひとつの家族で6~8枚程度のボリュームがあり、お客さまに手書きしていただくのには相当な時間がかかります。また、お子さまの成長に関する一部の書類を毎年書き換える必要が出てくるなど、お客さまの負担も決して少なくはありませんでした」と語る。

こうした状況をシステム刷新により改善することで、業務改革に加えて顧客の利便性および満足度の向上を目指したのである。