さて、ここからは新製品紹介に切り替わった。まずConnected Deviceが2020年には200億台にも達するとし、こうしたConnected Devicveが安全に接続されるためには高いセキュリティ性能が求められる。これに向けて低消費電力で低コスト、かつ高い性能を持つプロセッサが必要ということで同社のNancy Fares氏(Photo02)が登壇、「i.MX 6Dual SCM」を発表した(Photo03)。これは同社のi.MX 6DualをベースにFlash MemoryとDDR SDRAM、PMICまでをPoP(Package on Package)の形で積層したSCM(Single Chip Module)である。またInhand Electronicsが8週間で開発したとする、i.MX 6Dual SCMをベースにしたボードも披露された(Photo04)。

Photo02:VP of System SolutionsのNancy Fares氏

Photo03:この写真はちょっとわかり難いが、円筒の直径は50mmちょいしかない。SCMそのものは17mm×14mmである

Photo04:黒いベース部は液晶ディスプレイとバッテリーで、アクリルに覆われた部分がi.MX 6Dual SCMを搭載したボード。デモでは胸に収めたWebカメラの映像を取り込み、そのまま液晶に表示すると同時に、WiDiを使って他のディスプレイに表示するという事が行われた

次はIoT Truckの紹介が行われたが、こちらの紹介はTechnology Labsと合わせて行うことにして今回は割愛する。次いでIoTにおけるセキュリティの重要性をあらためて説明した後で、Gowri Chindalore氏(Head of Technology & Business Strategy)が登壇、同社が新しく発売した「Kinetis KW40Z」の紹介と共に、Proximityの開発したIoT Device Management Softwareをi.MX/Kinetis向けに提供してゆくことを明らかにした。

Photo05:Head of Technology & Business StrategyのGowri Chindalore氏

基調講演ではこれに続き、Kevin Mitonick氏(Photo06)を招いてセキュリティに関するさまざまな話題を取り上げた。話題は多岐に渡り、またTwitter経由での質問も受け付けたりしたのだが、一番聴衆を沸かせた話題は「Hackingの成功率は100%」と断言したことだろう。Reverse EngineeringとSocial Engineeringを組み合わせることで、Hackingが出来なかった例は無い、とした事だろう。また最後に披露されたMitonick氏の名刺(Photo07)もなかなか沸かせるものだった。

Photo06:「ハッカーを撃て!」とか「ザ・ハッカー」などで有名なMitnick氏。今はご自分の会社を興しておられる。ところで会社のWebサイトの写真と比べると、こう、随分とふくよかな感じに

Photo07:何が沸かせたかというと、名刺が金属製でPicking Toolになっていること。「これ1枚でどんな鍵も開けられる」そうで

セキュリティ繋がりで次に紹介されたのが、新しい「Kinetis K8xシリーズ」である。これはCortex-Mプロセッサをベースに高いセキュリティ性やAnti-Tampering性を持たせたもので、汎用ではあるものの、POS端末などセキュリティ要件が高いマーケット向けのものである。これに加え、ネットワーク分野に向けてRubicon LabsとAkamaiで協力していることを紹介(Photo08)。同社がAkamaiと開発しているZero Knowledge Keyという技術がFreescaleのNetwork Processor上にインプリメントされていることを説明した。

Photo08:Zero Knowledge Keyの説明を行うRubicon LabsのVP, ProductのRod Schultz氏。Zero Knowledge Keyは要するにすべての鍵を通常ではアクセスできないメモリ領域に格納することで、ユーザーがその鍵を知らない(=Social Hacking対策となる)まま利用できるようにするためのものとなる

次に話は自動車分野に移った。ここではGMのJohn Capp氏(Photo09)を招き、GMの取り組んでいるより安全な運転システムについてビデオを交えて紹介。そのシステムが2017年モデルのキャディラックに搭載されることも明らかにされた。

Photo09:General MotersのDirector of Safety Strategies & Vehicle ProgramsのJohn Capp氏。手にしているのはFreescaleのMCUを利用したECU

最後に紹介されたのは、「SAM Project」への取り組みである。これは元Indy CarのRace Driverであり、2000年に負った怪我でリタイアしたSam Schmidt氏(Photo10)に、再び運転を出来るようにしようというもので、Arrow ElectronicsとFreescaleのコラボレーションで成立しているものだ。「四肢麻痺の状態でどうやって運転を行うか」はProjectサイトの動画を見てもらうのが早いが、要するに首の動きでハンドルを、口に咥えたチューブへの圧力でアクセル/ブレーキのコントロールを行うというもの。この首の動きやチューブの圧力検知はKinetisで、その検知結果から車を制御する部分のシステムはi.MX 6をベースとしており、システム全体はArrow Electronicsが構築した。こちらのデモはTech Labsでも展示されたので、これはまた改めて紹介したい。

Photo10:Sam Schmidt氏。2000年のオフシーズンテストで頸髄損傷により、現在も四肢麻痺の状態にある