ミズノは3月16日、野球のバットスイングの解析を可能とするシステム「スイングトレーサー」を開発したと発表した。

同システムは、バットのグリップエンドにミズノが独自に開発したプログラムを組み込んだセイコーエプソン製専用センサを取り付け、スイングをすることで、打者のバットスイングの傾向などを知ることができるというもの。

野球のバットスイングの解析を可能とするシステム「スイングトレーサー」

これまでバットスイングの分析というと、スイングの様子をビデオで撮影し、以前のものと比較する、といったことが多く、スイングを科学的に解析し、それを実際の練習に活用するといった取り組みは少なかった。今回、同社では同システムを実用化するにあたって、スイング解説を元侍ジャパン社会人代表監督の小島啓民氏が、データ監修・解説を早稲田大学 スポーツ科学学術院の矢内利政 教授がそれぞれ行い、以下の8つの数値データを解析することで、バットスイングを正確に知ることができることを突き止めたという。

  1. スイング時間
  2. スイング回転半径
  3. ヘッドスピード(MAX)
  4. ヘッドスピード(インパクト)
  5. ヘッド角度
  6. インパクト加速度
  7. ローリング
  8. スイング軌道

8つのスイング解析データの概要

これらの計測データは、選手用アプリケーションを利用することで、閲覧が可能なほか、カレンダー機能を用いて、過去の情報と比較することができる。また、スイング軌道をアニメーションとして見ることもでき、選択した2つのスイングを重ねて比較することもできるため、選手の調子の波を調べることも可能だという。

カレンダーにより、スイングごとの記録管理が可能

アニメーションによりスイングのデータを可視化してみることができる

さらに素振りモードの活用により、スイングの回数やスイング速度、練習時間などのデータ計測も可能。これにより、練習の質などの向上を図ることができるようになる。

スイングごとの8つの数値データを調べたり、2つのデータを比較参照したりすることが可能

加えて、プロ野球選手のスイングデータも収録。自分の軌道を重ねて見たりすることもできる。

さまざまなプロ野球選手のスイングデータと自分のデータを比較することも可能

一方、コーチ向けにもアプリケーションが用意されている。こちらは登録したプレーヤー全員の素振り結果やデータを一覧でみたり、分類分け、比較などが可能。時系列で見て、選手の調子などを客観的に把握することが可能なほか、選手のスイング1つ1つにコメントを付けることも可能となっており、選手の上達を早める強い武器になると同社では説明している。

なお、発売日は2015年5月9日。価格はセンサが2万9800円(税別)、センサを取り付けるアタッチメントが1800円(同)。アプリはサーバ使用料が31日あたり980円(同)、コーチ用が2980円(同)となっており、同社 ダイヤモンドスポール事業部 事業部長の久保田憲史氏は、「野球の練習では、コーチなどが指導する際に伝えたい感覚を言葉で表すのが難しい、例えば最短でバットを出せ、とよく言われるが、感覚的にはどういったものか良くわからないという課題があった。しかし、同システムを用いて、実際の数値を使って指導ができるようになれば、もっと練習の効率を挙げられるようになる」と期待を述べ、中学生をはじめとして大学生、社会人幅広く使ってもらいたいとした。

説明を行うミズノ ダイヤモンドスポール事業部 事業部長の久保田憲史氏

なお、ミズノでは、ウェラブルやセンサを活用したビジネスの強化を図っていきたいとしており、同システムについて、販売初年度で6000万円、5年後には2億円規模の事業に育てたいとしている。

また、会見には元プロ野球選手の田口壮氏も登場。実際に同システムを付けたバットをスイングしてみて、「このシステムは現役の時に欲しかった。ビデオも用意することなく、スマホだけあれば良いのも手軽。マシンでもティーバッティングでも良いけど、オフシーズンに使って、スイングの改造とかに役立てたかった」と語り、プロ野球選手でも活用が可能であることを指摘していた。

バットを振って実現を行ったのは元プロ野球選手の田口壮氏。そのヘッドスピードはMaxとインパクト時でほぼ同じであり、ローリング数やインパクト加速度もまだ現役で通用しそうな数値を出していた