富士通研究所は2月10日、異なる日時に撮影された同じ患者のCT画像に対して、高精度に腫瘍の位置合わせをする技術を開発したと発表した。
詳細は、2月19日から東北大学(宮城県仙台市)で開催される「電子情報通信学会 パターン認識・メディア理解研究会(PRMU)」にて発表される。
医師は、がん検診や病気の経過観察において腫瘍の変化を観察するため、異なる日時に撮影された同じ患者のCT画像を比較している。そして、より詳しく観察するために拡大表示したい腫瘍の位置を手動で指定し、比較対象の画像上でも対応する腫瘍を拡大表示する。この際、呼吸・心拍の影響によって前回の撮影時から腫瘍の位置ずれが発生するため、医師は複数枚の断面画像から該当する断面を見つけ、その断面上においても腫瘍の位置を手動で合わせるといった煩雑な作業を必要としていた。
また従来、画像を位置合わせする際に、比較的特徴のある部位の点(特徴点)を自動的に複数求め、もう一方の画像上でも同様にして求めた特徴点との対応関係を手掛かりにして、腫瘍の位置を自動で合わせていく技術あったが、腫瘍の周辺に特徴点が少ない場合に位置合わせの精度が低下するといった課題があった。また、これに対応するため、特徴点の抽出範囲を広げると、今度は場所によって呼吸などに起因する変形の際の特徴点のずれ方が異なるため、離れた場所にある特徴点のズレから腫瘍位置を推定することが難しいという新たな課題が発生していた。
そこで今回、腫瘍の周辺に血管などの特徴点が少ない場合に、広範囲の特徴点を手掛かりにして、腫瘍の位置を自動で高精度に合わせる技術を開発した。前述した通り、腫瘍から遠く離れた特徴点におけるズレが、腫瘍位置におけるズレと必ずしも一致するとは限らないため、同技術では、腫瘍位置におけるズレと一致する傾向がなるべく高くなるように、腫瘍からの距離に応じて重みづけをして腫瘍位置のズレを算出していくという。
また、腫瘍から近い位置の特徴点は、体の連続性から動きが類似し、ズレも類似する傾向にあるため、腫瘍に近い特徴点のズレを重視し、これを腫瘍位置のズレの計算に反映している。さらに、特徴点を対応させる際に比較する特徴点数が増えることで処理量が増えるが、比較に用いる画像特徴量(周辺画素情報)を簡素化することで処理を高速化している。これにより、複数枚の断面にわたる位置合わせを高速に行えるとしている。
そして今回、肺疾患症例の実験では、実用化の目安となる誤差2.5mm未満で位置合わせ可能な割合が、従来の33%から83%へ向上することを確認した。また、1件当たり数百枚の断面画像の中から、腫瘍が存在する可能性が高い約20枚の断面画像を対象に腫瘍の位置を合わせる場合、約1.5秒で処理できたという。これにより、画像診断業務の位置合わせに掛かる時間を低減でき、医師の負荷軽減に貢献できるとしている。今後は、さまざまな画像による実証実験を重ね、2015年度中に富士通製品への搭載を目指すとコメントしている。