別記事の通り、12月4日にフリースケールセミコンダクタジャパンは都内で「FTF Japan 2014」を開催した。本来ならば10月6日に開催予定だったこのイベント、台風の影響で一度中止となり、12月に改めて開催されたものであるが、この間に大きな変更があった。というのは10月末日付で前社長のDavid Uze氏が退任したのである。そのため、今回のFTF Japanは新社長であるKenric Miller氏のお披露目という位置づけをも持つことになった。
さてそのFTF Japanで、新社長就任発表会とでも言うべき記者説明会が開催されたので、こちらをご紹介したいと思う。記者説明会そのものはまずKenric Miller氏による挨拶と、ついでBrandon Tolany氏による簡単な説明が行われたが、こちらは同日の基調講演のダイジェストとも言うべきものなので、ここでは割愛して質疑応答の内容を中心にお伝えしたいと思う。
まずフリースケールセミコンダクタジャパンについて「確かに私はまだ社長に就任して30日しか経っていないが、私は(Motorolaから数えて)もう26年Freescaleに居り、長年日本には出張して来ている。なので、このポジションについてすぐに『どうするか』を考えはじめた。私はこの機会を貰ったことを大変うれしく思う」とした上で、「日本にはFreescaleにとってのチャンスが溢れている。顧客もすばらしい。非常に狭い場所に、魅力的な大顧客が集中して存在している。例えば自動車業界なら日立製作所・デンソー、民生機器ならソニーやパナソニック、ネットワークなら富士通やNECなどだ。この顧客の密度は世界的にも類の無いもので、非常にエキサイティングだと考えている」とした。
また今後の売り上げやシェアに関して、まずTolany氏が「全世界に占める日本の売り上げ比率は大体10%弱で、これは毎年変わっていない。ただ金額は年々増えている。今年はまだ第1~第3四半期の数字のみしか公開していないが、この範囲で言えば前年比で14%ほど伸びており、業界全体の成長率が低い中で非常に良い数字と考えている」としたほか、Miller氏は「我々はIoT(Internet of Tommorow)に向けて非常に充実したポートフォリオを持っており、そして日本の顧客はこのIoTに向けてよいポジションにいる。なので、NetworkからEnd to End、Wearable、自動車などさまざまな分野でIoTに向けた取り組みがなされるところすべてに、我々の機会があると考えている」と説明した。また、「特に自動車業界については、我々の日本におけるシェアは全世界のシェアに比べてずっと低く、ここを引き上げる必要があると考えている。もちろん伸び率は大きいが、他の市場と比べた場合、まだここには十分チャンスがあると考えている」ともした。
実はこの話は先代のUze氏、あるいはその前の高橋氏が社長だった頃からの同社の課題であり続けている。そこで、説明会の後で「北米や欧州では、競合メーカーのプレセンスはそう高くないから、相対的にFreescaleはシェアを取り易かったと思うが、日本では競合メーカーのプレセンスが非常に大きい。これをどう崩してゆくのか」と尋ねたところ「それはそうだが、ただシェアが低いというのはチャンスがあるということだし、我々はさらにシェアを伸ばして行けると思う」という非常に前向きな返事が返ってきた。元々Miller氏の前職は北米地区のAutomotive向けのSales Directorでこの業界には詳しいし、北米にも当然日系自動車メーカーが多く存在するから、こうした状況は十分把握している。その意味では、Freescaleとしては日本の自動車メーカーの攻略の切り札として、Miller氏を派遣したと考えても良いのかもしれない。