さて、ここからはPress Meetingの話となる。基調講演の際にはPrabhu氏の後で、同社の大谷卓也氏がRelease 2014bのアップデートを説明されたが、Press Meetingは同じ内容をPrabhu氏が説明されたので、こちらの情報をベースに説明したい。

Release 2014bにはいくつか違いがあるが、まず目立ったところではGUIまわりの改善がある。1つはグラフ周りの改善(Photo32)で、従来より滑らかで可視性の高いグラフ描画が可能になった。またカラーマップを変更したり、グラフのラベルを自動回転させたりといった細かな変更もある(Photo33)。

Photo32:グラフの曲線を滑らかに描画できるようにしたり、フォントやラインにアンチエイリアスをかけたり、など

Photo33:ラベルは従来水平のみで、長いラベルだと他の項目と重なったり全部表示できなかったりしたが、Release 2014bからはラベルを回転させることで全部表示できるようになった。カラーマップはMicrosoftのOfficeに相似したものだが、別に真似たわけではなく見やすいカラーマップを追及したらこうなったとのこと。またUTF-8のサポートで日本語ラベルが化けたりしなくなったそうだ

加えて新しい日付時間のデータタイプも追加された。次がデータサイズで、これまで計算時間が長かったものに対しての様々な解は提供されてきた(Photo34)が、データ量が過大なものに対する解がなかった。これに対する対応が、Release 2014bで対応されたDatastores/MapReduce/Hadoopである(Photo35)。

Photo34:これは従来のバージョンで提供されてきたもの。高速化に関しては一定の解が提供された

Photo35:若干表現というか分類の仕方は違うが、ほぼPhoto26と同じ内容である

まずDatastoreであるが、これは複数のファイルをまとめて扱えたり、大規模テキストデータからストリーミング的に取り込むことが出来る仕組みである(Photo36)。これにより、メモリに入りきらないような大量のデータからのインポートが簡単に出来るようになった。Hadoop(Photo37)とかMapReduceの説明は不要だろう。これらの仕組みを取り込んだことにより、スケールアウト環境での性能改善と大規模なデータのハンドリングが期待できるようになった。

Photo36:左右のコードを見比べると、datastore()の追加により、遥かに簡単に扱えるようになった

Photo37:MATLABもHadoopのJAVAフレームワークへアクセスして動作する

Custom Toolbox Packageは、開発したソースを配布する際に、独自のToolboxを生成して再配布、インストールを簡単に行えるようにするためのもの(Photo38)。またソース管理にGITおよびSubversionが利用できるようになった(Photo39)のも変更点だ。

Photo38:これは任意のMATLABのコードやデータ、アプリケーション、サンプル、ドキュメントをまとめてパッケージにできるというもの

Photo39:たとえば自分のToolboxをGitHubにおいて、これを利用して他人と同期を取りながら共同作業といったことがMATLABの中から簡単に行えるようになった

次はSimulinkに関するもので、Data Inspector(Photo40)は容易デバッグを行うためのツール。Model Templateは、モデル構築の際に、白紙からスタートするのではなく、ユーザ定義のテンプレートモデルから構築するための機能で、必ず使うブロックや設定などがあらかじめ指定されたモデルをテンプレートとして保存しておくことにより、グループでの開発作業が効率化される利点が有る(Photo41)。また新機能としてFast Restartが実装された(Photo42)。

Photo40:これについては、説明のビデオを見ていただくほうが判りやすいと思う

Photo41:Smart Editing CuesとViewmarkで、モデル構築を素早く行ったり、アクセスが楽になり、開発作業の効率化に貢献する

Photo42:モデルは変更せずパラメータだけ変更する、という場合にシミュレーションをリコンパイルせずに実行できるので、再起動が高速になるというもの

これらはあくまでもハイライトで、他にも多くの機能追加や変更がRelease 2014bでなされているそうである。