テレダイン・レクロイ・ジャパンは10月1日、3相モーターの制御と駆動をオシロスコープで解析するためのソフトウェア「モーター・ドライブ・パワー解析ソフトウェア」を発表した。同社が6月18日に発表した8チャンネル入力のオシロスコープ「HDO8000シリーズ」のオプションとして販売する。ベータ版を10月に、正式版を2015年1月に提供する。販売予定価格は70万円(税抜き)。
オシロスコープ(デジタルオシロ)は普通、垂直分解能が8ビットであり、アナログ入力チャンネル数が最大4チャンネルである。オシロスコープの用途のほとんどは小信号計測なので、この仕様で不足することは基本的に考えられない。ただし、高電圧や高電流などを扱うパワー計測では8ビットの分解能だと足りないことがある。例えば600Vといった高電圧を扱おうとすると、8ビット(256分割)の分解能では、5Vの違いを精度よく観測することは難しい。また最近の家電用モーターや電気自動車用(ハイブリッド車を含む)モーターは、3相の交流信号で制御することが多い。モーター制御信号の計測には、1相当たり電流と電圧で2チャンネルのアナログ入力を必要とする。3相交流で駆動するモーター(3相モーター)では、少なくとも6チャンネルのアナログ入力チャンネルが要る。通常の4チャンネル入力オシロスコープだと、1台では足りない。最低でも2台の4チャンネル入力オシロを用意しなければならない。
このような用途を想定して開発されたオシロスコープが、「HDO8000シリーズ」である。垂直分解能が12ビット(4096分割)あるので、フルスケール600Vでも1V未満の分解能で信号を観測できる。そしてアナログ入力チャンネルを8チャンネルと多く備えるので、3相モーター制御の計測に6チャンネルを割り当てても、まだ2チャンネルの余裕がある。
ただし、3相モーター制御回路の解析はそれほど簡単ではない。マイコンのPWM(Pulse Width Modulation)出力やシリアルデータ出力などの観測による制御ソフトウェアのデバッグ、インバータ方式のモーター駆動回路の計測、モーターの挙動(トルクや回転速度など)の計測、という3種類の計測と解析を実施する必要がある。オシロスコープという単純なハードウェアだけでこのような計測環境をエンジニアが構築するには、非常に高度な技術と多大な作業負担を要求する。オプションの「モーター・ドライブ・パワー解析ソフトウェア」を組み込むことで、こういった解析作業の負担が大幅に減少する。
オシロスコープ「HDO8000シリーズ」と「モーター・ドライブ・パワー解析ソフトウェア」の組み合わせによる解析。マイコンのクロック周波数として最大400MHzを想定したことから、HDO8000シリーズの最大入力周波数を1GHzに決めたという |
従来、モーター制御回路の計測には、パワーアナライザにモーター評価オプションを追加して実行することが多かった。ただし、パワーアナライザは波形観測機能がオシロスコープに比べると限定的であり、マイコン制御ソフトウェアのデバッグには向かないとテレダイン・レクロイ・ジャパンは主張する。一方でモーター制御信号(電圧と電流)の測定精度ではパワーアナライザが優れており、高精度の測定結果を望む場合は、パワーアナライザを使うべきだとする。