英ARMは9月24日、MCU向けのハイエンドコアとしてCortex-M7を発表した。これにあわせて、STMicroelectronicsも同日、このCortex-M7コアを搭載した「STM32F7」を発表した。
このCortex-M7とSTM32F7に関しての説明会が都内のSTMicroelectronicsのオフィスで開催されたので、内容をご紹介したい。
Cortex-M7
説明会の前半は、ARMのRichard York氏(Photo01)による、Cortex-M7の説明が行われた。Cortex-M7のポジショニングは、Cortex-M4を上回るハイエンドのアプリケーション性能であるとし(Photo02)、ターゲットはAutomotive/IoTのSensor Hub/FAなどのIndustrial Controlといったマーケットであるとする(Photo03)。
Photo01:Richard York氏(VP, Embedded Segment Marketing)。来週Santa Claraで開催されるARM TechConではSpeakerを勤めるとか |
Photo02:5 CoreMark/MHzの性能をたたき出す。ちなみにCortex-M4はARMによれば3.4 CoreMark/MHzとされる |
Photo03:いずれも従来のCortex-M4ではやや力不足とされていたマーケットである |
具体的にどんなことが可能か? ということで氏は3つほど実例を示した。例えば白物家電向け(Photo04)の場合、より多数のディスプレイを同時に制御したり、複数のモータ制御を1チップで行ったり、あるいはNUIを搭載したりといった事が可能になるとする。あるいはQuadcopter(Photo05)の例だと、より高精度な制御、あるいはセンサ類のデータ処理能力改善が期待できるとする。もう1つの例がPMP向けのスピーカーの例である。Cortex-M4だとDolby Digitalの2ch程度の処理が限界だったのが、Cortex-M4なら7.1chのDolby Digital Plus対応で、さらにさまざまな機能を追加できるとする。このあたりの話は、純粋に処理性能だけを考えればCortex-M4のDualとかTripleの構成でも実現可能ではあるが、コストに厳しいマーケットだけに、それを1チップで実現すべしというニーズが強く、より高性能なプロセッサが必要とされるわけだ。
そのCortex-M7、後述の様にSTM32F7は90nm eFlashプロセスでの製造なので1000 CoreMark程度の絶対性能だが、40nmの適応を当初から想定しており、28nmでの動作も可能と同社は考えているようで、最大で4000 CoreMark程度まで性能がスケールするとしている(Photo07)。これを実現する内部構造であるが、6段のパイプラインを持つ分岐予測付きのSuperScalar構成になるとしており、さらにキャッシュがほぼ標準構成になるようだ。またTCMも久々に復活した形だ(Photo08)。またFPUが強化され従来の単精度に加えて倍精度がサポートされている(Photo09)。これは次のColonna氏のセッションで出てきた話であるが、Cortex-M7の開発に当たっては、DiscreteのDSPと同等の性能を実現できるようにするのが設計目標の1つだったそうだ。
ちなみに説明会では省かれたが、配布資料(Photo10)では特に自動車あるいはFA(Factory Automation)向けに安全規格への対応が謳われており、ISO26262 ASIL DやIEC 61508 SIL 3に対応するための対応として、Lockstep動作までカバーするとしている。もちろんこれらは別に必須ではなく、あくまでライセンシが望めば、そうした環境が利用可能、ということだそうだ。