「はやぶさ2」のミッション

「はやぶさ2」はH-IIAロケットで種子島から打ち上げられた後、1年をかけて太陽を1周し、2015年11月~12月に地球に再接近。ここで地球スイングバイを行い、目的の小惑星1999 JU3に向かう。小惑星には2018年6月~7月に到着し、およそ1年半の滞在期間中に、リモートセンシング(遠隔観測)、そしてサンプル採取に挑む。

小惑星からは2019年11月~12月に出発。地球には2020年11月~12月に帰還する予定だ。初号機は元々4年の計画がトラブルのせいで7年に延びたが、「はやぶさ2」は最初から6年の計画だ。再突入カプセルの着陸は初号機同様、オーストラリアを想定。「はやぶさ2」はカプセルを分離後、今度はRCSを噴射して地球を避け、新たな旅に向かう予定だ。

ミッションの流れ。初号機よりも小惑星滞在期間が長い

地球帰還後、余力があれば追加ミッションも考えられる

初号機が向かった小惑星イトカワは岩石質のS型小惑星であったが、「はやぶさ2」の目的地である1999 JU3は、炭素質のC型小惑星だ。有機物や含水鉱物が多いと見られており、サンプルを持ち帰って詳細に分析すれば、太陽系の起源と進化、生命の原材料などについて、様々な知見を得ることができるだろう。

搭載されるミッション機器。今回初めて搭載される観測機器も

小惑星1999 JU3。行ってみなければ分からないことも多い

なお、イトカワに比べると1999 JU3という名前は味気ないが、これは仮符号と呼ばれるもので、正式な名称ではない。今後、発見者であるMITのリンカーン研究所に働きかけ、親しみやすい名前が付けられる見込みだ。ただ、「初号機のときに大変いい名前を付けてしまったので、どうしたものか」と、國中プロマネは頭を悩ませる。

相模原キャンパスでの作業はほぼ終わっており、今後、「はやぶさ2」の機体は種子島に輸送。種子島では、推進剤の充填などの作業を行い、打ち上げに備える予定だ。

初号機はトラブルがあったことで注目され、そのあまりにドラマチックな展開ゆえに、社会現象にもなった。あれは狙ってできるようなことではないが、「はやぶさ2」の旅路について問われた國中プロマネは、「もちろんスムーズな方がいいに決まっている」と笑った後、次のように答えた。

「宇宙の現場は決して甘いものではないと思っている。そういうことがあってもへこたれないように、プロジェクト一同、気を引き締めて新たな航海を目指したい」

初号機は世界で初めて、小惑星からのサンプルリターンに成功したが、まだ1回成功しただけである。前述のように、初号機の経験をフィードバックし、「はやぶさ2」では様々な改良が盛り込まれたものの、それでも、全く平穏無事で済むような生やさしいミッションではないだろう。覚悟が込められた、非常によいコメントだと筆者は思う。