日立製作所と日立産機システムは7月9日、産業用モータの国際高効率規格の最高レベルであるIE5を達成するアモルファスモータを開発したと発表した。
同試作機は、アモルファスモータの鉄心に用いるアモルファス金属の高精度評価技術と最適設計技術を開発したことにより実現したものである。アモルファス金属は、従来のモータに使用されている電磁鋼板よりも鉄損が約1/10と大幅に損失が低い材料だが、モータのステータ鉄心に利用する場合には、加工劣化性が問題となる。加工劣化性とは、鉄心を加工したときの残留応力や、固定されている時の応力状態などによって、磁化特性や鉄損特性が大きく劣化してしまうものだが、従来の方法では、実際のステータ鉄心にアモルファス金属を適用した状態での磁気特性を正確に把握することができなかった。そこで今回、鉄心の表面に超小型磁気センサを配置することで、これまで測れなかった内部の磁束の流れなどの測定方法の実用化に成功した。従来の方法では、アモルファス金属の損失測定誤差が、損失の2~5倍と大きく、実際の状態を正確に把握できなかったが、同手法により測定誤差を±5%以内と、大幅に精度が向上できることを確認した。
また、これまでに培ってきた各種の3次元有限要素法解析技術に加え、パーミアンス法による高速・高精度モータ設計手法を開発したことで、電気特性から熱計算までの特性予測がこれまでの1/10以上高速に、かつ、2倍以上高精度に行えるようになった。さらに、材料特性にアモルファス金属の磁気特性を反映させ、その鉄心形状を大規模パラメータサーベイによって最適化することで、これまでよりも高い効率での設計を可能とした。
今回、11kW容量のモータを対象に、冷却用のファンをなくしモータの軸長を短くしたファンレス扁平構造の設計を行って試作評価した結果、従来の体格以下で、これまでのIE4クラスのモータの損失をさらに3割低減して、96%の高効率化を実現できることを確認し、IECの高効率ガイドラインであるIE5レベルを達成できたという。今後は、2015年度の製品化を目指し技術開発を進め、産業用ポンプやファン用途向けなどに販売をしていく予定。