東京工業大学(東工大)は、ダイヤモンドの結晶構造を持ち高い屈折率を有しながら最小粒径が5nm程度の微小ダイヤモンド「ナノダイヤモンド」を分散させた薄膜に透明性と適度な光拡散特性を持たせることに成功したと発表した。

同成果は、同大大学院理工学研究科の坂尻浩一 特任准教授、戸木田雅利 准教授らによるもの。詳細は「第63回 高分子学会年次大会」にて発表された。

ダイヤモンドは高屈折率な物質であるため、光散乱能力が高く、少量を添加するだけで、透明フィルムなどの白濁化の原因の1つである多重散乱を抑えることができ、数μm程度の厚みで、機能性光学フィルムの作製が可能となる。しかし、一般にナノサイズの粒子を分散させることは難しく、良好な分散状態を実現するためには界面活性剤の活用が必要となっていた。しかし、近年、爆轟法にて生産されるナノダイヤモンドが、30~250nm程度に凝集した状態で容易に水に分散する性質があることが分かり、活用に期待が集まっている。

今回、研究グループでは、母材としてポリビニルアルコール(PVA)を用い、粒子の大きさが異なる3種類のナノダイヤモンド/PVAナノコンポジット薄膜を試作。同薄膜は、粒子の大きさに依存して光学特性を変化させることができるため、粒径に応じた利用価値があるという。

例えば粒子が大きい場合は透明性が低くなる半面、光をよく散乱させるため、光拡散フィルムとして機能するほか、粒子が小さい場合はガラス並みに高透明で光を散乱させないため、表面硬度が高く耐引掻き性能に優れる高透明表面保護フィルムなどとしての利用が考えられ、そして粒子が中程度の場合では透明性を保ちながら、光を適度に散乱するため、透明スクリーンとしての使用などが考えられるとする。

研究では、実際に透き通っているため背景を眺めることができると同時に、プロジェクターなどで画像を投影することができ、透明スクリーンとしての機能を持つことを確認したとする。

なお、研究グループでは、今回の成果を受け、ガラスやプラスチックなどの透明基板は身の回りにたくさんあり、波及効果は極めて大きいことから、今後、同技術の実用化に向けた研究開発を進めていく、とコメントしている。

ナノダイヤモンド分散液を塗布したガラス板。左は曇りがなく透明な様子(奥のポスターをはっきり見ることができる)。右はスクリーン機能(奥からプロジェクターを照射し画像を見ることができる)