盛大にカーブ

……曲がった。盛大に曲がった。同行していたマイナビニュースの担当者(サッカー初心者)にも「めっちゃ回転してますね」と言われてしまうほどの強い回転がかかっている。おかしいな、ボールの芯をとらえることを意識して脚を振りぬいているはずなんだけど……。

その後も何発、何十発とシュートを打ってみるも、すべてダメ! 僕は右利きなのだが、ボールに左回転がかかるせいで、すべて左へ曲がってしまうのだ。

斉藤さんは難なく無回転シュートを決めていく

対する斉藤さんがお手本として見せてくれる無回転シュートは、一目見てはっきりわかるほど回転していない。しかもゴール前で急激に落下し、不規則な動きをしながらネットに突き刺さっている。わかってはいたけれど、同じことをやってみると、改めてサッカー選手のすごさに気付かされる。

いったいどうしたら……

このままではつくばから帰れない。いったいどうしたらいいのか。

と、ここで僕の蹴る姿を見てくれていた斉藤さんからアドバイスが。

具体的なアドバイスが!

浅井教授からも細かく蹴り方を教えていただいた

「ボールの右の方をつま先で蹴ってしまっているから、左に曲がってしまうんです。軸足を少し離すことを意識して、気持ちインサイドでボールの左側を蹴ってみてください。右に飛んでしまってもいいやくらいの感覚で」

なんて具体的なアドバイス! そうなのだ、僕にはボールを蹴る際、つま先に近い部分でボールの右側を蹴ってしまうクセがあったのだ。そのため、無意識にボールを巻き込むようにコントロールしてしまい、自然に左回転がかかっていたというわけ。さらに、本田のシュートみたくボールを浮かせようとしていたせいで、ボールの下側を蹴ってしまっている。自分では芯をまっすぐとらえていたつもりなのだけど、そもそもそれすらできていなかったのだ。

このアドバイスを意識してから、だんだんと回転が減っていくのが自分でもわかった。最初は苦笑いだった浅井教授やスタッフの皆さんからも、「これはひょっとしたら近いシュートが1本くらい打てるかも」という声が出始める。

がしかし、100発近く慣れないシュートを打ったことで、僕の体は限界を迎えようとしていた。シュートの方は回転こそ減ったものの、それでもまだ無回転には程遠い。右足の甲と、左足の内ももが痛い。もうダメだ。企画倒れ決定か?

もうダメか?

と思ったそのとき!

絶望しながら無心で脚を振り抜いたそのとき、今までとははっきり違う感触が脚に伝わってきた。ボールはいつものように左回転……せずに、まっすぐゴールに飛び込んでいく。こ、これは!?

「今の良かったんじゃない? 落ちるときに少しだけ不規則な動きもしたみたいだよ」

「最初は20点くらいのシュートだったけど、50点くらいにはなったね」と浅井教授

ついにできた。一発だけのマグレだし、シュートというよりはパスと呼んだ方が正しいくらいの低威力なボールではあったけど、「無回転に近いシュート」を打つことができたのだ。ま、「無回転シュート」ではなく「無回転に近いシュート」なんだけど……そこはもう勘弁してください。

ありがとうございます、斉藤選手!

お世話になりました、浅井教授!

いやはや、それにしても無回転シュートは難しかった。原理は理解できても、物理的にできないことっていうのは世の中にたくさんあるんだなという当たり前の真理を改めて実感したチャレンジだった。

もう無回転シュートを蹴りたいなんて言わないよ絶対

W杯を観戦するときは、今までよりももっとボールの動きに注目して見てみることにしようかな。