金沢大学は5月15日、認知機能が正常な地域住民を対象に、緑茶・コーヒー・紅茶を飲む頻度と、その後の認知機能低下との関連性の研究を行った結果、約5年後に認知機能が低下しているリスクが、緑茶をまったく飲まない群と較べて、緑茶を週に1~6 回飲む群では約1/2に、緑茶を毎日1杯以上飲む群では約1/3に減少していることを見出したほか、コーヒーや紅茶では、こうした認知機能低下との関連がみられないことを確認したと発表した。

同成果は同大医薬保健研究域医学系 脳老化・神経病態学(神経内科学)の山田正仁 教授、篠原もえ子 助教らの研究グループが、石川県七尾市中島町において、自治体や地域住民の協力を得て行ったもの。詳細は米国科学誌「PLOS ONE」に掲載された。

今回の研究は、認知機能正常の地域住民を対象に、緑茶・コーヒー・紅茶を飲む頻度と、その後の認知機能低下(認知症または軽度認知障害の発症)との関連を明らかにすることを目的として行われたもの。研究方法としては、2007年~2008年に石川県七尾市中島町に住む60歳以上の方を対象に、研究開始時に緑茶・コーヒー・紅茶を飲む頻度に関する質問、認知機能検査、採血検査を実施したほか、研究開始時に認知機能が正常の723人について、2011年~2013年に追跡調査を行い、研究開始時の緑茶・コーヒー・紅茶摂取と、追跡調査時の認知機能低下との関係を解析。解析では、年齢その他の認知機能低下に関連する可能性がある要因の影響を調整した解析方法として、多変量ロジスティック解析を用いたとする。

その結果、追跡調査に参加した490人(平均追跡期間4.9 年)のうち、26人(5.3%)の認知症発症と64人(13.1%)の軽度認知障害発症が確認されたという。緑茶を飲まない群を基準(オッズ比=1)とした場合、週に1~6日緑茶を飲む群の認知機能低下(軽度認知障害あるいは認知症の発症)のオッズ比(95%信頼区間)は0.47(0.25~0.86)に、毎日1杯以上緑茶を飲む群の認知機能低下(軽度認知障害あるいは認知症の発症)のオッズ比(95%信頼区間)は0.32(0.16~0.64)に低下していることが確認された。また、コーヒー・紅茶摂取と認知機能低下(認知症あるいは軽度認知障害発症)との関連はみられなかったという。

今回の結果を受けて研究チームは、緑茶摂取習慣が認知機能低下に予防的効果を有する可能性が示唆されたとするほか、今後、緑茶に含まれる天然化合物の作用機序の解明により、有効かつ安全な認知症予防法開発につながることが期待されるとコメントしている。

健常者の緑茶・コーヒー・紅茶摂取頻度と将来の認知機能低下(認知症または軽度認知障害発症)のリスクとの関連。健常者の緑茶・コーヒー・紅茶摂取頻度とその後(平均4.9年後)の認知機能低下(認知症または軽度認知障害発症)のリスクとの関連について検討した結果。摂取していない群を基準(オッズ比1)とし、性別、年齢、高血圧・糖尿病・脂質異常症の既往、教育年数、ApoE E4有無、喫煙、飲酒、緑茶・コーヒー・紅茶摂取頻度、運動・趣味の有無で調整して解析を行ったという(多変量ロジスティック解析)。(*P値<0.05、**P値< 0.01)