東京工業大学(東工大)は、中性子が非常に多い原子核でみつかっている「中性子ハロー」「魔法数の消失」、「強い変形」という3つの特異構造が、重いネオン同位体である「ネオン31(31Ne)」にすべて発現していることを定量的に明らかにし、これを統一的に理解することに成功したと発表した。

同成果は、同大大学院理工学研究科の中村隆司教授と理化学研究所(理研)、韓国ソウル国立大学、英サレー大学、日本原子力研究開発機構(JAEA)、仏カン素粒子原子核研究所(LPC-CAEN)、東京大学原子核科学研究センター(CNS)、東京理科大学らによるもの。詳細は米国物理学会の学術誌「Physical Review Letters」電子版に掲載された。

ネオン31は中性子を陽子の2倍以上多く含むネオン同位体で、ネオン30(30Ne)というコンパクトで硬い芯原子核のまわりに、薄く雲のように拡がった1個の中性子がとりまく「中性子ハロー」という特異な構造を持つことが知られている。

今回観測されたネオン31(31Ne)の描像。30Neというコンパクトで硬い芯原子核のまわりに、中性子1個が薄く拡がって雲のようになっている部分(中性子暈/中性子ハロー)がとりまいている。31Neが約3:2(長軸:短軸比)で変形していることも判明した

研究グループは理研RIビームファクトリー(RIBF)の不安定核ビームを用いて、ネオン31を人工的に生成し、分解反応を用いてその解明を行った。その結果、中性子ハロー構造の定量的な同定に加え、重いネオン同位体では中性子の魔法数"20"および"28"が消失し、原子核が強く変形していることが示されたという。

また、「魔法数の消失」や「強い変形」が中性子ハローの形成に重要な役割を果たしていることも確認されたが、研究グループでは、このハローの形成メカニズムはさらに重い原子核にも適用できるため、類似の特異な書く構造が普遍的に表れる可能性があると説明している。

なお研究グループでは、原子核にどれだけ中性子を詰めても存在可能かという、まだ解決していない核物理の根源的な問いへの手がかりにもなるとの考えを示すほか、"どれだけ重い原子核・元素が存在しうるのか"という問いの解決にも繋がるものになると説明している。また、中性子の非常に多い原子核は超新星爆発などの天体現象で一瞬作られた可能性があることから、今回の成果は不安定核の特異構造を理解する重要な鍵を与えるもので、重い元素合成過程の理解にも繋がる成果と言えるともしている。

核図表(原子核の地図)。横軸が中性子数、縦軸が陽子数(原子番号)を表わす。ネオン31(31Ne)は陽子数が10、中性子数が21で、存在限界に近い原子核である。31Neはハロー構造が発見されている原子核の中では最も重い