東京工業大学(東工大)は2月6日、水の臨界点(374℃、218気圧)付近の高温高圧下で形成される水+炭化水素混合系の無限時間放置した状態で液相が巨視的に変化せず、熱力学的に安定となる状態である「液液平衡」において、水リッチ相と炭化水素リッチ相の上下位置関係が、圧力変化によって逆転する液液相転移を発見したと発表した。
同成果は、同大大学院理工学研究科化学工学専攻の下山裕介 准教授、同 東郷昌輝氏、同 稲守由輝氏らによるもの。詳細は「The Journal of Chemical Thermodynamics」に掲載された。
高温高圧下における水+炭化水素2成分系では、気液・液液・気液液平衡といった複雑な相挙動を示すが、これらの相挙動は、軽質炭化水素や重質炭化水素といった炭化水素の種類によって大きく異なり、軽質炭化水素+重質炭化水素から成る炭化水素混合系では、水+炭化水素2成分系と比較して、より複雑な相平衡が形成されると考えられてきた。
そこで今回、研究グループでは、一定の温度下において、水+軽質炭化水素+重質炭化水素系の液液平衡を形成させ、圧力を操作する実験を実施。その結果、高圧条件では上相が水リッチ相、下相が炭化水素リッチ相となり、低圧条件では、上相が炭化水素リッチ相、下相が水リッチ相となることを確認したほか、液液相転移が生じる圧力について、重質炭化水素の供給組成や、軽質炭化水素の種類が及ぼす影響を把握することに成功したという。
これらの結果について、高温高圧水を利用したオイルサンドや堆積岩に含有される石油、タール、アスファルト等の重質油成分である「ビチュウメン」などの超重質油改質プロセスにおいて、改質反応工程や分離・精製工程での相状態を明らかにする上で不可欠な知見となると研究グループでは説明しており、今後は、さらに幅広い温度・圧力条件、ならびに多種の炭化水素混合系における液液相転移の把握を目指し、今回の知見を基にした液液相転移を再現する理論モデルの構築などにつなげたいとコメントしている。