近畿大学は2月3日、スロベニア・リュブリャナ大学との共同研究により、結晶でも非晶質(アモルファス)物質でもない第3の状態として知られる、「準結晶」を形成する仕組みを発見したと発表した。

成果は、近畿大 理工学部理学科 物理学コースの堂寺知成 教授、大城辰也氏(2011年同・大学理工学部理学科物理学コース卒業)、リュブリャナ大学シュテファン研究所のプリモシュ・ジハール博士らの国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、2月3日付けで英科学誌「Nature」に掲載された。

準結晶は、2011年にイスラエル工科大学のダニエル・シェヒトマン氏が「準結晶の発見」でノーベル化学賞を受賞したことにより、その存在を広く知られることになった第3の状態である。

固体の結晶形成については、例えばビリヤード台にぎっしり玉を並べると、玉の中心は正3角形や正6角形に並ぶことが知られている(画像1)。そこで研究チームは今回、ビリヤード玉のような硬い玉を芯としてその周りに柔らかいスポンジの皮をつけたような物質を並べるとどのようになるか、数値シミュレーションを用いて調査を行った。

すると、皮の厚さや玉の密度が一定の条件を満たす時に、正10、12、18、24角形の対称性を持つ準結晶の様相が現れたのである(画像2・3)。この結果により、これまでその存在のみが証明されていた準結晶が、どのような条件において形成されるかが明らかになったというわけだ。

画像1(左):ビリヤードの球をきれいに並べると、その中心は正3角形、正6角形に並ぶ。画像2(中):周囲にスポンジの皮をつけて並べると、球の中心は正5角形や正10角形の輪に並ぶ。画像3(右):今回のシミュレーションで得られた、18回対称性を表す回折像

今回の成果により、粒子の芯(コア)と皮(シェル)の厚さの比率、ならびにコア-シェル型粒子の密度をコントロールすることで、準結晶を自由自在に形成する可能性が示された形である。

準結晶構造は「フォトニックバンドギャップ」と呼ばれる、一定の周波数の光が存在できない領域を持ちやすいことが知られていた。分子には「自己組織化」と呼ばれる、自ら秩序を持つ構造を作る性質があるが、この性質と組み合わせることによって、将来的には太陽電池や光回路、バイオセンサなどの開発に利用されることが期待されるとしている。