無人機は日本の防衛計画の中でも重要な位置付け
それではまず、日本の防衛省・自衛隊がどのような無人機を保有しているのか、また研究開発を行っているのかどうか、という「防衛省における無人機研究の取組み」からお届けしよう。講演を行ったのは、防衛省経理装備局の野間俊人(のま・としひと)技術計画官だ(画像1)。
後ほど「諸外国の軍事用ロボットの概要」で詳しく紹介するが、世界的に見て軍隊における無人機の導入はすでにかなり進んでおり、今後もさらに進んでいくことが明らかなこと。自衛隊は現在のところ公式には軍隊ではないが、軍事力を備えた組織であることから、日本の防衛という面からも世界の動向を無視するわけにはいかず、無人機を大きく注目している。
その具体的な証拠となるのが、2013年中に予定されている防衛計画の大綱の見直しに向けて7月26日に公表された「防衛力の在り方検討に関する中間報告」の中にある。「防衛力の能力発揮のための基盤」という大項目の中の「防衛生産・技術基盤の維持・強化」という項目内に、「最新の科学技術動向や実際の運用環境を踏まえ、ロボットなどの無人装備・サイバー・宇宙といった新しい分野における研究開発を含め、将来を見据えた重点的な研究開発に取り組む」とあるのだ。ロボットなどの無人機は、今後の先頭様相を変えうる「Game Changer」として、重点的に研究開発を行う分野の1つ、というのが防衛省における無人機研究開発の位置づけなのである。
自衛隊が使用する車両や船舶、航空機、誘導武器および統合運用に資する各種装備品から防護服に至る広い分野の研究開発を一元的に実施しているのが、防衛省技術研究本部だ。組織図は、画像2の通りである。自衛隊が使用する無人機も、同本部で研究開発されている形だ。
同本部の人員および研究開発予算は画像3の通り。2012年度のデータで、総額が1067億8500万円。その内訳としては、試作品費が45%、試験研究費が41%、施設整備費および研究用機械器具費が5%、人件費およびそのほかが9%となっている。なお予算については歳出ベースでは前述した額だが、契約ベースでは約1300億円だ。
また総員は1093名。48%を占める525名が研究職技官となっている。そのほかは、陸上自衛官が11%の122名、海上自衛官が8%の85名、航空自衛官が6%の66名、事務官が26%の287名、指定職が1%の8名。研究職技官は主に研究所にて研究を行い、開発された試作品の試験評価を担当し、各自衛隊の自衛官は主に技術開発官の下で開発を担当する。研究開発に従事する職員の割合としては、73%が占める形だ(その内の66%が研究職技官、34%が自衛官)。
続いては、防衛省における研究開発プロセス。装備品の研究開発は、各自衛隊からの運用ニーズに基づくものと、技術研究本部の策定する技術戦略に基づく技術シーズの2種類が存在している。開発は、各自衛隊からの必要な機能・性能に基づき実施される形だ。プロセスの詳細は、画像4をご覧いただきたい。
無人機の研究を積極的に実施している
続いては、将来的な研究事業の取り組みの方向、中長期的な技術見積もりを紹介しよう。技術研究本部が独自に実施する技術研究について、中長期的な技術分野の取り組みの方向性を明らかにすることを目的とし、統合幕僚長が作製する統合長期防衛戦略の作成に当たり、防衛力の質的方向についての参考となるものだ。現状版は、平成19(2007)年に作成されたもので、現在は最新版を作成中で、平成26(2014)年に公開される予定である。
平成19年の中長期技術見積もりにおいても、コア装備の「ロボット・無人機」および関連する「情報収集・探知装備」に関する研究は積極的に実施する技術分野と認識されており、UGVや爆弾処理ロボットなどの地上ロボット、UAV、UUV・USVの水中ロボット、センサ技術の4点について、研究の方向性が定められている(画像5)。
各分野の取り組みの方向については、地上ロボットについては複数のロボット群にてシステム運用可能なロボットシステム、というもの。UAVについては、高高度・長時間滑空性、空中自律公道・戦闘、小型可搬性としている。水中ロボットは、まずUUVは水中自律行動、周辺の知覚、目標の識別、判断、通信、攻撃などのプラットフォームとネットワーク化。USVについては遠隔操縦、自律航行、高速化、耐航性となっている。最後の情報収集・探知装備のセンサ技術だが、滑空型UAVや偵察用航空機などにも搭載可能な電波/光波センサシステム、という具合だ。