すばる望遠鏡(ハワイ島)で4年前に発見された宇宙誕生初期の“謎”の巨大天体「ヒミコ」は、一直線に並んだ3つの星団を巨大な水素ガス雲が包み込んでいる構造をしていることが、東京大学宇宙線研究所の大内正己准教授や国立天文台、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターなどの共同研究で分かった。3星団は合体してさらに大きな天体を形作ろうとしているところで、銀河が作られる最初の過程を明らかにする上で重要な成果だという。
「ヒミコ」は「くじら座」の方向、129億光年離れた遠方にある非常に明るい巨大なガス雲で、2009年に発見された。137億年前に宇宙が誕生してからわずか8億年後のもので、“古代宇宙に輝く天体”として邪馬台国の女王「卑弥呼」の名前が付けられた。
「ヒミコ」の広がりは5万5,000光年と、われわれの太陽系がある“天の川銀河”の半径にも匹敵する大きさで、同時期に存在した一般的な天体に比べて約10倍も大きい。さらに、太陽の数百億倍という大質量をもつことが分かってきたが、これほど巨大なガス雲を高温で輝かせるエネルギー源などについては謎のままだった。
研究チームは、チリ共和国にある電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」やハッブル宇宙望遠鏡、スピッツァー宇宙望遠鏡を使って詳しく観測した。その結果、「ヒミコ」は巨大なガス雲の中に、3つの星団が一直線上に長さ2万光年以上にわたって並んでいることが分かった。さらに活発な星の形成の様子も観測され、1年間に太陽の質量の約100倍におよぶガスが星に変化していることが明らかになった。この激しい星形成活動がヒミコのガス雲を温めるエネルギーとみられる。
その一方、アルマ望遠鏡による電波観測では、星が活発に作られている「爆発的星形成銀河」で観測される固体微粒子が発する電波や、星形成活動度の指標となる炭素原子ガスが出す電波がいずれも検出されなかった。
宇宙創成のビッグバン(大爆発)によって水素やヘリウムの軽い元素が合成され、その後形成された星の中での核融合反応によって、さらに重い炭素や酸素などの元素が作られるとされる。今回のアルマ望遠鏡の観測で、重い元素からなる固体微粒子や炭素原子が検出できなかったことは、「ヒミコ」は水素やヘリウムを主体とする、まさに「形成中の原始銀河かもしれない」という。
研究論文"An Intensely Star-Forming Galaxy at z~7 with Low Dust and Metal Content Revealed by Deep ALMA and HST Observations"は、12月1日発行の天文学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に掲載される。
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