オービタルエンジニアリング(OE)は5月28日、オープンソースハードウェアの3Dプリンタ「cRoBo 3D(シーロボ3D)」を発表した。完成品としては販売せず、設計図の公開と組立部品の供給を7月より行う予定。オープンソースハードウェアとして情報を開示することで、研究機関、企業、個人などによる利用や改良を促進し、市場の拡大を狙う。

cRoBo 3D(シーロボ3D)

同社は航空宇宙関連メーカー。機器や材料の開発/製造を専門としており、国際宇宙ステーション(ISS)の日本モジュール「きぼう」に設置された「小型衛星放出機構」の開発にも関わった。3Dプリンタ用の材料として、耐熱性、耐放射線性、高熱伝導といった機能を持つ専用樹脂も開発して、超小型衛星の構造部品への適用も目指す。

cRoBo 3Dは、世界中でオープンソースとして開発が進められている電子部品や制御ソフトウェアを活用することで、低コスト化を実現。入力データは、3Dプリンタでは一般的なSTL形式に対応しており、市販/フリーの3D CADが利用できる。

試作1号機のテーブル部分。20cm×20cm程度のオブジェクトまで対応可能だ

コントローラにはArduinoを採用。電源はPC用のATX電源が利用できる

ノズル径は0.7mmで高さ方向のピッチは0.3mm。これはカスタマイズ可能だ

このサンプルは数時間程度で完成したという。素材はPLAだがABSにも対応

現在は、開発した試作機による性能評価やチューニングが行われているところ。スペックなどについてはまだ変更になる可能性もあるが、7月に公開する予定の完成機では、組み立てに必要な部品のトータルコストは5~6万円程度になる見込みだ。

完成品として販売するわけではないので、同社に直接的な利益はほとんどないが、開発の狙いについて、山口耕司社長は「これはオープンソースハードウェアという手法に対する実験でもある」と明かす。

山口社長が理事長を務める次世代宇宙システム技術研究組合(NESTRA)は、50kg級の超小型衛星の技術開発に取り組んでいる。超小型衛星は、技術的にはすでに実用段階になりつつあるが、課題はむしろ「それを使って何をするのか」という利用面だ。新しいユーザーの開拓が急務で、オープンソースはその起爆剤となり得る。

NESTRAが開発中の「ほどよし4号機」。地上分解能6mクラスの光学センサを搭載する

「オープンソースハードウェアは世界中に開発者がいるので、進化がものすごく早い。大手より早いケースすらある。超小型衛星もいずれはそうなるのではないか」と山口社長は見る。オープンソースにより、衛星の低コスト化と高性能化が進み、それにより利用がどう拡大するのか。cRoBo 3Dは、そのヒントになるかもしれない。

なお、同社は3Dプリンタに関する勉強会も開催する予定。詳細については、同社のFacebookページにて順次公開していくとのことなので、気になる人はチェックするといいだろう。