テクトロニクス社は3月21日、400Gや1Tなどの次世代光ネットワークやワイドバンドRF、高速シリアルなどの分野向けに最高50GSpsのサンプルレートを提供することが可能な任意波形ジェネレータ「AWG70000シリーズ」を発表した。
同シリーズは、研究開発が進められている最高20GHzのワイドバンドRFの測定や最高12GBpsの高速シリアル信号、コヒーレンと光のワイドバンドベースバンド信号といった次世代のハイエンドな計測分野のニーズに対応することを目的に開発された任意波形ジェネレータで、最高50GSpsのサンプルレートのほか、最高16Gワードの波形メモリ長、そして10ビットの垂直分解能による-80dBc以上のスプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ(SFDR)を実現している。
実際にベル研究所にて先行してテストを行った結果、50GSpsの高速レンプルレート、および2台のAWG70000の同期運転により、従来の記録の倍以上の光キャリアあたり30GBaud、データレート233Gbpsが達成できたとする。
また同社は併せて、これらの性能を実現する10ビットD/Aコンバータ(DAC)「TDAC-25」の単体販売も開始することを発表している。同製品はIBMの8HP SiGeプロセスを用いて開発されたASICで、1チップで25GSpsのデジタル-アナログ・サンプルレート性能、10ビット分解能、60dBc以上のダイナミック・レンジの性能を実現している。すでに同製品はデザイン・インとプロトタイプをサポートするために必要な設計ドキュメント、専用の技術サポート、2つのTDAC-25C DACコンポーネンツを含むデザイン・パッケージ「TDAC-25D」という形態で同社と競合しないシステム設計者に対して提供されており、購入希望者はテクトロニクスの担当者まで連絡をしてもらいたいと同社では説明している。
また、同製品を搭載することでAWG70000シリーズには、TDAC-25を2つインターリーブすることで1チャネルでサンプルレート50GSps、出力周波数20.0GHz、最大波形メモリ16Gまで対応する「AWG70001A」とTDAC-25を2つそのまま使用して2チャネルとして、サンプルレート25GSps、出力周波数10.0GHz、最大波形メモリ8Gまで対応する「AWG70002A」の2機種が用意されている(波形メモリは標準では2Gで、16Gならびに8Gはオプションとして提供)。
さらに、複数台を同期させてつなげるマルチユニット同期に対応しており、チャネル数の拡張が可能だ。これにより、HDMI 2.0のテストやフェーズドアレイ・レーダ・システム、光通信用高速I/Q信号の生成といった用途への対応が可能になるとする。
加えて同社では2つの波形生成ソフトウェアもオプションとして用意している。1つはIQやIF、RF信号を簡単に生成することができる「RFXpress」で、アナログ/デジタル/カスタム変調を簡単に信号に追加することが可能なほか、レーダやOFDM用の専用のプラグインも用意されているという。もう1つはテスト・レシーバにストレスを加える障害を不可したジッタやシンボル間干渉(ISI)、プリ/デ・エンファシス、スペクトラム拡散クロッキング、ノイズなどの各種データパターンの生成を容易に行える「SerialXpress」で、SATAやPCIe、SAS、DisplayPort、Fibre Channel、HDMI、USB、MIPIなどのメジャー規格に対してはあらかじめパターンライブラリが提供される。
このほか、軍用レーダーなどの開発にも用いられることが考えられるため、セキュリティ面にも配慮されており、USBポートの使用を禁ずる「USBロック機能」やデータストア用のリムーバブルSSD、ディスプレイの写り込み防止のためのディスプレイOFF機能、データ削除手順(Declassification)などの機能も搭載されている。
なお価格はAWG70001A、AWG70002Aともに標準状態(1chの50GSpsサンプルレート対応、もしくは2ch 25GSpsサンプルレート対応で1680万円(税別)。オプションとして提供される16Gサンプルレコード長(AWG70001A)、8Gサンプルレコード長(AWG70002A)はそれぞれ118万円(税別)となっている。いずれも受注はすでに開始しており、2013年6月末より出荷を開始する予定としている。